抄録
高齢で発症した心サルコイドーシス症例を経験した.生来健康であったが74歳で眼病変,75歳で皮膚病変を発症した.75歳で完全房室ブロックが出現したため当科に精査目的で入院した.ツ反陰性,血中ACEは26.1 IU/l,Iysozymeは23.5μg/mlと高値であった.胸部X線では肺野の線状・小粒状影を認め,心電図では心拍数40/分で,完全房室ブロックと前胸部誘導でのR波の減高を認めた.201TI心筋シンチグラムでは心室中隔および心尖部の一部に灌流欠損像を認めた.冠動脈造影で左右冠動脈に異常所見なく,右室心尖部の心筋生検にて,間質へのリンパ球浸潤と巨細胞を伴った類上皮細胞肉芽腫を認めたため,心サルコイドーシスと診断した.本症例は高齢になり活動性を示し,洞調律から完全房室ブロックへの移行を確認でき,心筋生検にて確定した,本邦における最高齢者である.老年者完全房室ブロックの鑑別診断において本症も念頭におくべき疾患の1つと考えられた.