心臓
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研究 左室拡張能に関する安静時および運動負荷時のドプラ指標:年齢,心拍数との関係
第1報:健康学童および若年成人による検討
神谷 康隆大中 正光浜岡 建城尾内 善四郎
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1995 年 27 巻 3 号 p. 217-225

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抄録

53例の健康学童および若年成人を対象に安静時(側臥位,坐位)と軽度運動負荷時(坐位)のパルスドプラ心エコー法を施行し,各条件下における左室流入血流パターンと年齢,心拍数との関係を検討した.左室流入血流波形の拡張早期血流・最高流速(E)の平均値±SD(cm/sec)は安静左側臥位77±14,安静坐位78±14,負荷時101±15で,安静左側臥位-安静坐位間には有意差を認めなかったが,負荷時は安静時に比し有意に増加した(p<0.01).Eは各条件下で年齢との間に軽度の負の相関を認め(r=-0.27~0 . 4 0 ; p < 0 . 0 5 ~ 0 . 0 1 ) , 心拍数とは無相関であった.心房収縮血流・最高流速(A)の平均値±SD(cm/sec)は安静左側臥位36±10,安静坐位42±11,負荷時80±13で,各条件間で有意差を認めた(p<0.01).Aと年齢との間には安静時,負荷時ともに軽度の負の相関を認め(r=-0.28~-0.35;p<0.05),心拍数との間には安静時に高い正の相関(r=0.58,0.77;p<0.001),負荷時に軽度の正の相関(r=0.29;p<0.05)を認めた.E/Aは年齢と無相関であったが,心拍数との間には各条件下で高い負の相関を認めた(r=-0.47~-0.76;p<0.001).E/Aをそれぞれの心電図RR間隔(sec)で除して補正した(E/A)/RRは,すべての条件下で年齢,心拍数に無相関で,さらに各条件下での平均値は2.38~2.43/secとよく一致した(NS).以上の結果より,健康学童および若年成人の左室拡張動態は,生理的な条件の変化に影響されず心拍数に対し常に一定のE/A比で作動していることが結論づけられた.

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