心臓
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研究 急性心筋梗塞時冠動脈再疎通後の陰性T波の経時的変化とその臨床的意義
小菅 雅美木村 一雄根本 豊治清水 智明持田 泰行中尾 正行杉山 貢石川 利之久慈 直光宮崎 直道栃久 保修石井 當男
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1995 年 27 巻 7 号 p. 603-608

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抄録

我々は再疎通に成功した急性心筋梗塞(AMI)で発症2~7日後に陰性T波が一過性に消失する例は梗塞サイズが大きく,左心機能の改善が不良であることを既に報告した.本研究ではより早期の陰性T波に着目し,その臨床的意義と陰性T波の一過性消失との関連について検討した.再疎通に成功した初回前壁梗塞46例で陰性T波は発症36時間後に一過性にピークを形成したが,このピーク時の深さ(ピーク値)はCPK最高値および退院時(平均14日後)の左室駆出率,左室局所壁運動,梗塞周囲径比,左室拡張終期容積係数,収縮終期容積係数と有意な相関を示した(p<0.01).一方,発症2~7日後に陰性T波が消失する消失群28例と消失しない非消失群18例に分類し比較検討すると,発症早期のピーク値は消失群が非消失群に比し有意に小さかった(6.0±3.1vs9.5±4.5mm,p<0.01).
発症早期の陰性T波のピーク値が大きい程退院時の左心機能は良好であり,一方,ピーク値が小さいことは一過性消失と関連があり退院時の左心機能が不良であることを示した.
AMI発症早期に陰性T波を経時的に観察することは簡便に退院時左心機能を推定できるという点でその臨床的有用性は大きいと考えられた.

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