心臓
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研究 非虚血性心疾患例の心室頻拍発生に及ぼす自律神経活動
林秀 樹藤木 明谷昌 尚水牧 功一下野 真由美井上 博
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1996 年 28 巻 12 号 p. 947-955

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抄録

右室流出路起源心室頻拍は運動などの交感神経活動が亢進した時に発生しやすい.しかし,非虚血性心疾患に伴う心室頻拍の発生に自律神経活動がどのように関与するかはいまだ明らかでない.そこで,ホルター心電図で心室頻拍発作の記録された非虚血性心疾患例を対象に,心室頻拍発生直前の自律神経活動の変化を心拍変動解析で評価した.器質的心疾患がなく右室流出路起源の心室頻拍を持つ7例(37±14歳),拡張型心筋症の7例(62±12歳),肥大型心筋症の5例(47±15歳)を対象とした.心室頻拍(5連発以上の心室期外収縮で,心拍数が100/分以上)40回の直前1280秒間を5等分し,この区間の心拍変動を最大エントロピー法を用いて周波数解析を行った. 時間領域の指標としてp N N 5 0 , S D N N も測定した.いずれの疾患群においても,平均RR間隔は心室頻拍の発生に向かって次第に短縮した.右室流出路群では高周波成分( H F , 0 . 1 5 - 0 . 4 0 H z ) ,pNN 50は減少し,その一方低周波成分(LF,0.04-0.15Hz),LF/HF,SDNNが増加した.拡張型心筋症群ではSDNNが増加し,一方HF,pNN 50は減少した.これら2グループとは対照的に,肥大型心筋症群ではSDNNの増加を認めたが,周波数領域の指標には明らかな変化を認めなかった.以上の所見から,心室頻拍の発生に関与する交感神経と副交感神経の役割は,基礎心疾患により異なる可能性のあることが示唆された.

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