1996 年 28 巻 12 号 p. 962-966
我々は,狭心症を主訴として来院し,手術にて大動脈炎症候群による左冠状動脈入口部狭窄と診断された症例を経験したので報告する.
症例は19歳,女性.既往歴に特記すべきことなし.労作時胸痛を訴えて来院しホルター心電図にて症状に一致したST低下が認められた.検血などの一般検査や胸部CT,大動脈造影に異常は認められなかったが,冠状動脈造影上,左冠状動脈入口部に99%の狭窄が認められた.その後左冠状動脈入口部に内膜摘除術を施行し,症状は消失した.手術所見は上行大動脈,肺動脈主幹部,右大腿動脈壁は肥厚しており,上行大動脈の病理所見から大動脈炎症候群と診断された.本例の大動脈炎は,上行大動脈,肺動脈主幹部,右大腿動脈を侵していたが,狭窄をきたした分枝は左冠状動脈だけと考えられていた.大動脈炎症候群では,炎症反応が陰性で大動脈造影上で主要分枝に異常が認められない場合でも,冠状動脈入口部だけに狭窄をきたす例が存在し,注意を要すると考えられた.