心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
研究会 第30回 理論心電図研究会 第1テーマ:心電図波形の成り立ち 肥大型心筋症における異常Q波の成因
心肥大の画像所見と冠動脈内心電図の対比から
戸嶋 裕徳古賀 義則山鹿 昭彦冷牟田 浩司
著者情報
ジャーナル フリー

1996 年 28 巻 3 号 p. 234-243

詳細
抄録

肥大型心筋症(HCM)でしばしば見られる異常Q波の成因は心室中隔の非対称性肥大によると考えられ,一部の例では心筋の線維化によるものがあることが明らかとなったが,その詳細は不明である.
今回我々は冠動脈内心電図(ic-ECG)を左前下行枝内で記録し,中隔・左室接合部の心基部から心尖部にかけての心表面心電図を正常心電図を示した胸痛症候群,心筋梗塞群,異常Q波を伴わないHCM群,異常Q波を伴うHCM群について比較検討すると共に,左室造影,断層心エコーおよび一部の例ではMRIにより左室の肥大形態を分析対比した.
その結果,異常Q波を伴った12例のHCM中4例ではic-ECGでもQ波を認め,心筋線維化によると思われたが,8例では標準12誘導心電図のQ波の部位とは無関係に心基部での起電力が大きく,興奮伝達時間も遅れており,対照群および異常Q波のないHCM群とは有意の差を示した.さらに,この群では心基部の肥大が強い一方で,心尖部の心筋はnon-QHCM群に比し有意に薄いことが知られた.
したがって,non-QHCM群では心室中隔の肥大のみならず左室が心尖部までび漫性に肥大しているのに対し,QHCM群では心基部を中心とした強い不均等な肥大が初期ベクトルの方向を大きく変え,このために異常Q波が出現するものと思われた.

著者関連情報
© 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top