心臓
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臨床 経皮経静脈的僧帽弁交連裂開術(PTMC)の63例の成績,合併症と長期予後
池ノ内 浩原田 和昌河本 修身高橋 利之伊藤 敦彦田宮 栄治羽田 勝征竹中 克芹澤 剛
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1996 年 28 巻 8 号 p. 641-648

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抄録

東京大学第2内科,JR東京総合病院において僧帽弁裂開術(PTMC)を施行した63例の急性期,慢性期の成績とこれに影響を与える因子を検討した.平均年齢53±10(30~76歳),男性24例,女性39例,合併疾患は大動脈弁閉鎖不全4例,大動脈弁狭窄1例,冠動脈二枝病変1例,直視下僧帽弁交連切開術(OMC)8例,非直視下僧帽弁交連切開術(CMC)後4例,閉塞性動脈硬化症2例,糖尿病2例,慢性腎不全1例であった.拡張はstepwise inflation法で,バルーン拡張ごとに超音波検査を行った.スコア8以下では開大率(72% vs 66%),その後の弁口面積減少度(-0.04 vs -0.07cm2)ともやや良く,弁肥厚が3ポイント以上の群で開大度が低く,再狭窄しやすかった.重症僧帽弁逆流の発生は,54歳以下で6%,55歳以上で11%と高齢者で多い傾向にあった.重症僧帽弁閉鎖不全発生率(女性15%,6/39;男性0%)は女性で発生率が高かった.術前の弁口面積と術後の面積の間には弱い相関があり,高度に狭小化した弁では開大に限界を認めた.心房細動例でより重症例が多く,心係数が低く,PTMCによる開大も低かった.重症僧帽弁閉鎖不全を合併した例は全例が心房細動例であった.交連切開術後の12例では僧帽弁開大度が非手術例の74±53%に対し49±31%と少なく,33±23カ月後の弁口面積も直後の1.51±0.32cm2から1.43±0.28cm2と再狭窄の傾向を示した.心房細動のある女性では合併症に注意する必要がある.

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