心臓
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臨床 左心耳血栓の形態学的診断について
経食道エコー法によるワーファリン治療前後での比較
中野 由紀子土手 慶五佐々木 正太二宮 正則満田 広樹奥原 種臣
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1996 年 28 巻 8 号 p. 651-657

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抄録

左心耳(LAA)血栓は,心房細動症例における有力な塞栓源であり,その描出が経食道エコー(TEE)の進歩により可能となった.我々はTEEで判別困難なLAA構造物(特に櫛状筋)と小型血栓の鑑別を中心にその診断基準を考察し,それに基づき血栓形成のハイリスク症例について検討した.対象はTEEを施行した心房細動例87例.TEE上明らかな大型血栓を認めた例の一部および血栓様構造物を認めた12例に対し抗凝固療法を開始し(INR=1.5-3.0)経過を追跡した(1.5~12カ月).血栓様構造物が縮小あるいは消失したもののみをretrospectiveに血栓と確診した.血栓様構造物の形態はブリッジ状8例,棍棒状4例であり,うちブリッジ状の8例のみを血栓と確診した.結局このretrospectiveな確診を含めて血栓を17%に認めた.抗凝固療法後に最終的に判断した左心耳血栓群(15例)と無血栓群(72例)を比較すると,血栓群で有意に高血圧,脳梗塞の既往が多く,左室心筋重量,左心房径および左心房容積は大で,左房内もやもやエコーの出現頻度が高く左心耳内血流速度は遅かった.
TEE上ブリッジ状の像を呈するものを血栓と定義できたことはLAA小血栓と疑似構造物との鑑別診断に極めて有用であり,心房細動における塞栓症研究の信憑性を増すと考えられた.また,従来の左房拡大や左心耳内血流速度の低下に加えて,高血圧性心肥大が血栓形成のハイリスク症例であることが明らかとなった.

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