抄録
迷走神経刺激afモデルを用い,心房細動(af)の機序とIc群薬の効果を検討した.α-クロラロース麻酔犬の両側迷走神経刺激により,有効不応期と興奮波長(WL)は刺激頻度の増加とともに短縮し,これと相関して誘発afの平均周期も短縮した.10Hz刺激下の安定したaf中にピルジカイニド(PIL)とプロパフェノン(PRO)を投与したが,両剤ともaf周期を延長させ,PILは90%,PROは30%にてafを停止した(p<0.01,PIL vs PRO).PILの伝導速度抑制効果はPROより大で,一方,PROのWL延長効果はPILより大であった.薬剤投与前のafはtype II/III(Koningsら)であったが,af停止直前にはtype Iに変化した.本モデルにおいて,WLの短縮がaf発症の基質となることが示唆された.また,PILの伝導抑制作用によるaf停止効果が示唆された.
通常型心房粗動(AF)の機序と高周波カテーテル焼灼術(CA)の効果を臨床例にて検討した.AF中の右房内マッピングにより,三尖弁輪を反時計方向に周回する興奮旋回運動が確認された.この興奮旋回路にはAF周期の23±9%に相当する興奮間隙を認めたが,減衰伝導の性質は認めなかった.三尖弁輪一下大静脈間の解剖学的峡部に対する線状CAにより95%の例でAFは消失した.合併症はなく再発率は16%であった.AFのCAに際して,解剖学的峡部におけるブロックラインの確認が重要であった.