心臓
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第33回志摩循環器カンファランス テーマ : 生体時計・既日リズムの基礎と臨床 概日リズムと心血管系疾患
島田 和幸山本 啓二
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2000 年 32 巻 12 号 p. 1001-1011

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抄録

大規模な臨床疫学調査や個々の臨床成績は,いずれも急性心筋梗塞のみならず,一過性心筋虚血,不安定狭心症,突然死,重症不整脈,および脳卒中などのほとんど全ての心血管系疾患が覚醒起床後の午前中の数時間の時間帯に集中して発症する事実を報告している.神経・体液性の生理的諸指標の概日リズムの研究を通して,何故この時期に疾患が多発するのかが次第に解明されてきた.たとえば,血圧や心拍数は交感神経活性の充進とともに"morningsurge"という早朝の急激な上昇が観察される.これらが単なる生体内時計による生物学的現象の日内リズムのなせるわざではないことは,覚醒後故意に起床を遅らせた場合,生理諸指標の変動や心血管系疾患の発症時間も並行して後ろにシフトすることから理解できる.生物現象としての生体内時計と人間の行動が生み出す日内リズムの総和として,心血管系疾患の概日リズムが形成されると考えられる.これらの病態をふまえて,時間薬物治療学などの概念を導入しつつ心血管系疾患への対処を考えることが重要である.

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