抄録
肉眼的に明らかなT波の交替現象(T-wave alternans:TWA)は心筋虚血,電解質異常,QT延長,低体温などの種々の病態に伴って出現し,心室性不整脈の前兆となることが知られている.最近,肉眼的には判別不能なμV-levelの微細なTWAが定量可能となり,種々の疾患において致死性心室性不整脈high risk症例の選別に用いられている.肉眼的TWAの機序として活動電位持続時間のrestitutionと,細胞内Ca2+の変動に伴う活動電位波形のalternansが示唆されている.μV-TWAの機序の検討は少ないが,微細なTWAに関する我々の実験的検討からは活動電位波形のalternansの関与が示唆される.一方,臨床的には興奮伝導異常の関与も否定できない.μV-TWAの臨床的有用性は確立されたかにみえるが,方法論に内在する矛盾,複雑な判定基準,解析器が唯一つしかないなど克服すべき問題点も少なくない.今後はTWA以外の再分極の時間的変動指標との比較を含めた幅広い検討が必要であろう.