心臓
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症例 敗血症に伴い急性左心不全を呈した1例
岩崎 真佳田村 晃浩彦坂 誠神畠 宏西上 尚志河村 晃弘山上 和寿岩坂 壽二
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2000 年 32 巻 9 号 p. 721-726

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抄録

尿路感染を契機とした敗血症において,急性心筋梗塞類似の心電図変化と重篤かつ一過性のび漫性左室壁運動障害を示した急性左心不全例を報告する.症例は44歳男性,約1週間前から肉眼的血尿と熱発を認め,入院当日呼吸困難を主訴に近医を受診した.血圧低下と低酸素血症を認めたため,ドパミンの持続点滴と酸素投与を施行され,当院救命センターへ緊急搬送された.意識障害に対して人工呼吸が施行された後,心電図上側壁誘導にST上昇を認めたため急性心筋梗塞が疑われCCU入室となった.入院時の血行動態は,心係数2.Ol/min/m2,肺動脈楔入圧20mmHgと左心不全を呈しており,心エコー検査では心基部後壁を除きび漫性壁運動低下を認めた.同日緊急冠動脈造影を施行したが,正常冠動脈であった.第1病日より血行動態所見,ST上昇,左室壁運動は改善傾向を示し,第2病日にカテコールアミンを中止し人工呼吸から離脱,第3病日に左室壁運動は正常化し一般病室へ転室となった.今回の感染源として,感染性腎嚢胞によるE.coli菌血症が示唆された.敗血症に合併するショック兆候に際しては,本症例のごとく心原性因子が関与する可能性があり,臨床上注意を要すると考えられた.

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