心臓
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第34回志摩循環器カンファランス テーマ : 組織・器官の再生 マトリックスと臓器再生
筏 義人
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2001 年 33 巻 12 号 p. 951-960

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抄録
生態組織や臓器の再生には,細胞の注入のみで目的を達する細胞移植を除いて,一般に細胞の分化・増殖のための基礎が必要である.これを人工細胞外マトリックスとか足場材料と呼ぶ.この足場材料を用いて行う組織と臓器の再生をTissue engineeringとか再生医工学と呼ぶ.この小文においては,再生医工学の概要,特に足場マトリックスの再生医工学における役割を述べたのち,臓器再生の実例として心臓血管系にしぼってその現状を紹介した.
まず,微小血管の再生として,血管新生因子を用いた研究について述べた.そのためにVEGF遺伝子の投与が米国で臨床応用され,わが国ではHGF遺伝子が血管新生に用いられている.冠動脈のような小口径血管の再生も世界の多くの研究グループによって研究されているが,ここでは,Niklasonの血管再生研究を紹介した.現在,臨床応用までにはまだ至っていないようである.それに対し,大口径血管に関しては,先天性心臓血管障害の治療のために,生体吸収性の足場材料に患者からの血管細胞を播種後に体内に埋め込むことによって血管を再生する臨床応用の始まっていることを紹介した.心臓弁の再生もすでに動物実験が始まっている.
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