2001 年 33 巻 4 号 p. 305-311
総肺静脈還流異常症は比較的まれな先天性心疾患で,そのほとんどが生後早期より呼吸不全,右心不全を呈し,乳児期までには根治手術が必要となる.我々は最近,脳梗塞を機に入院し,60歳で確定診断され,根治手術を施行した総肺静脈還流異常症の1例を経験した.
症例は60歳,男性.主訴は左片麻痺.聴診上,第3肋間胸骨左縁での駆出性収縮期雑音と心尖部での汎収縮期雑音を聴取.心電図は心房細動,右軸偏位,右脚ブロックパターンであった.胸部X線では雪だるま型心陰影を呈し,心エコーでは拡大した右心系と心房中隔欠損,高度の僧帽弁閉鎖不全,三尖弁閉鎖不全,それと肺動脈弁狭窄を認めた.心臓カテーテル検査では,Qp/Qs=3.35,Rp/Rs=0.03であった.これらの結果と肺動脈造影より総肺静脈還流異常症Darling分類Ia型と診断し,根治手術を施行した.術後順調に経過し,現在患者は心不全症状もなく,元気に脳梗塞のリハビリに励んでいる.
今までに報告された国内外の40歳以上の症例30例を調査し,非手術のまま成人期まで生存できた要因と成人期例における治療方針について検討を加え報告する.