心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
症例 60歳で診断された総肺静脈還流異常症の1例
西堀 祥晴瓦林 孝彦田中 篤佐野 寿彦田口 晴之西田 幸生福井 寿啓高梨 秀一郎清水 幸宏
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 33 巻 4 号 p. 305-311

詳細
抄録

総肺静脈還流異常症は比較的まれな先天性心疾患で,そのほとんどが生後早期より呼吸不全,右心不全を呈し,乳児期までには根治手術が必要となる.我々は最近,脳梗塞を機に入院し,60歳で確定診断され,根治手術を施行した総肺静脈還流異常症の1例を経験した.
症例は60歳,男性.主訴は左片麻痺.聴診上,第3肋間胸骨左縁での駆出性収縮期雑音と心尖部での汎収縮期雑音を聴取.心電図は心房細動,右軸偏位,右脚ブロックパターンであった.胸部X線では雪だるま型心陰影を呈し,心エコーでは拡大した右心系と心房中隔欠損,高度の僧帽弁閉鎖不全,三尖弁閉鎖不全,それと肺動脈弁狭窄を認めた.心臓カテーテル検査では,Qp/Qs=3.35,Rp/Rs=0.03であった.これらの結果と肺動脈造影より総肺静脈還流異常症Darling分類Ia型と診断し,根治手術を施行した.術後順調に経過し,現在患者は心不全症状もなく,元気に脳梗塞のリハビリに励んでいる.
今までに報告された国内外の40歳以上の症例30例を調査し,非手術のまま成人期まで生存できた要因と成人期例における治療方針について検討を加え報告する.

著者関連情報
© 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top