心臓
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臨床 先天性心疾患の心不全に対するピモベンダン投与の初期経験
太田 真弓中澤 誠門間 和夫
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2001 年 33 巻 5 号 p. 393-398

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抄録

小児や先天性心疾患におけるピモベンダンの使用経験の報告はない.慢性心不全治療中の先天性心疾患の20例(年齢は3カ月から25歳,中央値=4歳)で,急性増悪時にピモベンダンを一治療として試みた.経口投与(0.033±0.014mg/kg)後に,臨床効果,副作用の有無を評価し,8例ではピモベンダンとその活性代謝産物であるUD-CG212の血中濃度を測定した.臨床効果として,末梢循環不全症状は全例で自覚的,他覚的に改善し,著しい呼吸困難の9例中5例で改善,PDE(phosphodiesterase)-III阻害薬静脈投与8例中6例で減量または中止できた.学童期以上の8例中7例でNYHA機能分類で3→2と改善した.心エコー上の左室内径短縮率は測定できた11例中7例で有意に改善した.強心作用と血管作用の乖離が示唆された.心拍数,収縮期血圧に変動はなく,不整脈出現,増悪などの副作用もなかった.体内薬物動態の検討では,ピモベンダンは投与後1~3時間にかけて,UD-CG212は2~3時間をかけてなだらかに上昇した.一回投与量と投与後1および2時間後の血中濃度との関係は有意の正相関はあるものの大きくばらついた.投与量は成人に比べ多かったが血中濃度はむしろ低めだったことは,小児を中心とした対象例での特異性が示唆された.また,低濃度でも症状や左室内径短縮率の改善があったことから,薬理作用の違いも示唆された.本薬剤は作用機序が特異なことから,他の薬剤への耐性のある例で,あるいは併用によって,急性効果が期待できる.

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