心臓
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研究会 第36回理論心電図研究会 テーマ : 心臓電気現象記録法の原理と臨床応用 コンピュータシミュレーションの臨床への応用
難波 経豊芦原 貴司藤本 千草天川 雅夫草野 研吾川瀬 綾香池田 隆徳中沢 一雄大江 透
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2001 年 33 巻 5 号 p. 468-475

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抄録

"既知のデータ"から"未知のデータ"をコンピュータで計算し予測するコンピュータシミュレーションは,不整脈分野における心筋興奮伝播パターンの解析に使用されている.これには,心筋興奮特性を数値化したモデル心筋による解析法と,心筋局所電位を多点で同時記録するマッピングからの解析法がある.前者では主に動物実験で捉えた心臓電気現象や動物実験で解析が困難な心臓電気現象の理論的解析が行われる.一方,後者では基礎研究および臨床で実際の心筋における興奮伝播パターンの解析が行われる.しかし,生体心でのバスケットカテーテルによるマッピングは解像度が低いため,複雑な興奮伝播パターンを呈する細動の生体での解析は困難である.
我々は,低解像度マッピングから複雑な興奮伝播パターンを解析可能にする補間アルゴリズム(time shading法)を開発し,生体ヒト心房筋での心房細動における興奮伝播パターンの解析に応用している.バスケットカテーテルを用いたヒト右房での心内膜マッピングに本法を適用すると,高位右房への同所性早期期外刺激による興奮波が右房後壁の分界稜で一時的な局所伝導ブロックを形成することによるspiral wave発生が,心房細動の誘発機序として観察された.また,この細動発生には右房内の不応期不均一性の関与が考えられた.今後,コンピュータシミュレーションが不整脈医療の向上にさらに貢献していくことが期待される.

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