心臓
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第13回臨床不整脈研究会 左室自由壁に存在するslow Kent束を介したlong RP'tachycardiaの1例
大和田 真玄小松 隆中村 紳木村 正雄奥村 謙
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2001 年 33 巻 Supplement5 号 p. 51-62

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抄録

症例は31歳,女性,疲労時ならびに精神的興奮時に出現する発作性上室性頻拍のため当科に入院.頻拍時の12誘導心電図は右脚ブロック型波形で,PR/R-P'比が1以下のlong RP'tachycardiaを呈していた.右室心尖部早期刺激法では,左室の前側壁に逆行性心房内最早期興奮部位を認めた.高位右房早期刺激法による房室伝導曲線はjumping up現象を認めず,右室心尖部早期刺激法による室房伝導曲線は減衰伝導を示した.電気的プログラム刺激では頻拍が誘発できなかったが,ISP負荷後は1ong RP'tachycardiaが自然誘発された.頻拍時の逆行性心房内最早期興奮部位はHis束電位のA波より先行するCS distalであった.ISP負荷により頻拍はincessantに出現,消失を繰り返した.頻拍出現時のcoupling interva1とreturn cycleの関係は負の相関関係を示し,本頻拍の機序がreentryであることが示唆された.よって本頻拍は,左室前側壁付近に減衰伝導の性質を有する副伝導路が存在し,その副伝導路を逆行する房室リエントリー性頻拍(AVRT)であると考えられた.CS distalより先行する部位に,アブレーションカテーテルの遠位側電位が記録され,同部位に対しての2回の通電で頻拍回路の恒久的離断が可能となった.

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