心臓
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臨床 Kirklin I 型心室中隔欠損の大動脈弁閉鎖不全についての検討
●欠損孔の大きさと手術時期について
寺町 紳二河合 隆寛大中 正光
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2002 年 34 巻 10 号 p. 777-781

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抄録

Kirklin分類I型の心室中隔欠損(VSD)の合併症として,大動脈弁変形および閉鎖不全(AR)は有名であり,その手術時期との関係については以前から多くの検討がなされている.我々も,過去14年間に当院で心内修復術を施行したKirklin I型VSDで,他に大きな合併症のない,成人2例を含む55症例のARを調べることにより,適切な手術時期について検討した.手術は全例パッチ閉鎖術を施行,成人1例のみ大動脈弁置換術を併用した.手術の理由は,AR出現27例,大動脈弁変形18例,肺体血流比(Qp/Qs)>2.0が8例,I型の確定診断が2例であった.小児期手術例のARは術後に改善または消失した例がほとんどであった.成人1例は欠損孔の長径およびQp/Qsともに小児例の平均以下であったにもかかわらず,弁置換を必要とするほどのARを認めた.ARの出現前に手術を施行した成人例は欠損孔径22mmで弁変形もあったが,術後7年たってもARは認めていない.今回の検討より,Kirklin I型のVSDは大動脈弁が逸脱するためにQp/Qsは大きくならなくても,比較的大きな漏斗部筋層欠損を有するものもあり,平均的直径のものでも長期間放置すると,弁置換を必要とするほど弁を障害する可能性があると思われた.I型のVSDは,待機的手術が可能であり,診断がついた時点から様々な要素を考慮しながら注意深い経過観察が必要であり,その中で適切な手術時期を逃さないようにするべきであると思われた.

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