心臓
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研究会 第35回志摩循環器カンファランス テーマ : 薬効から心不全を考える ARBとACEIはなぜ効くか?
金 勝慶
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2002 年 34 巻 12 号 p. 985-993

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抄録

心不全患者ではレニンーアンジオテンシン系(RA系)が賦活化されており,それが心不全の進展に重要な役割を演じている.ACE阻害薬が心不全の治療薬として確固たる地位を築いているが,もう一つのRA系阻害薬として,AT1受容体ブロッカー(ARB)が臨床応用され,ACE阻害薬とは異なる薬理作用を持つ点や副作用が少ない点で注目されている.最近,ARBのバルサルタンがアメリカで心不全治療薬として承認され,ARBもようやく心不全治療薬として認められつつある.ACE阻害薬とARBは薬理学的には異なる特性を持つ薬剤であるが,これまでに報告された基礎成績と臨床成績を総合すると降圧作用および心保護作用はACE阻害薬とARB間でほぼ同等といえる.すなわち,理論的な薬理作用の違いが本当に実際の臨床効果の差としてどの程度現れるのかどうかは現在のところ不明である.今後,両薬剤の相違点として重要と考えられているAT2受容体,キマーゼ,プラジキニンが各種病態において実際にどの程度関与しているかを解明する必要がある.一方で,ACE阻害薬とARBの併用が心不全の治療法として有効である可能性があるが,その点については来年発表予定のCHARM試験の結果によりさらに明らかになることが期待される.

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