2002 年 34 巻 4 号 p. 306-312
Na+-Ca2+交換を抑制する薬物をいくつか見つけたので,紹介したい.モルモットの心室筋細胞を用いて,ホールセルクランプ法でNa+-Ca2+交換電流(INCX)を誘発させ,それに対する薬物の効果を調べた.KB-R7943,BDM(2,3-butanedione monoxime)に加え,抗不整脈薬のアミオダロンやベプリジルがINCXを抑制した.細胞内に蛋白分解酵素であるトリプシンを入れておくと,BDM,アミオダロン,ベプリジルの抑制作用は,減弱した.このことから,これらの薬物が,細胞内から抑制効果を及ぼしている可能性が示唆された.KB-R7943はトリプシン感受性を示さなかった.KB-R7943は,一方向性のINCXを誘発する条件では,外向きINCXを内向きINCXより強く抑制する.しかし,両方向のINCXが交互に流れるような条件では,両方向とも同様に抑制する.このことから,KB-R7943の"方向依存性"抑制作用は,INCXを誘発する実験方法による見かけ上の作用である可能性がある.