心臓
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HEART's Original [症例] 診断に難渋した結核性心膜炎の1例
石川 雅透今中 和人西村 元延荻原 正規加藤 雅明朝野 晴彦横手 祐二許 俊鋭山田 裕一河本 修身西村 重敬
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2005 年 37 巻 1 号 p. 53-57

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抄録

症例は60歳の男性.特記すべき既往なし.労作時息切れを主訴に近医を受診.心嚢水貯留を指摘され利尿剤などの内服にても,心嚢水の減少傾向なく,当院心臓内科を受診.外来にてアスピリンの内服を追加するも心嚢水はむしろ増大傾向となり,また息切れも増悪したため,入院となった.諸検査にて原因の特定に至らなかったが,心嚢穿刺・排液にて自覚症状の改善は得られたので一旦退院した.
しかし3週後に労作時息切れの再燃と,心嚢水の増加を認めたため,再入院となった.再入院時に穿刺した心嚢水でもアデノシンデアミナーゼ(ADA)が高値を示す以外に有意な所見はなかった.再入院3週目より起坐呼吸となり,数日後タンポナーデの状態に陥った.心嚢水にフィブリンが多く,穿刺・排液が十分できないうえ,原因の特定も有効な治療方針決定も困難であったため,外科的に心膜切除,タンポナーデ解除を行った.
切除した心膜の病理検査にて結核性心膜炎の診断となり,抗結核療法を開始した.抗結核療法の反応性は良好であり,症状や炎症所見は著明に改善した.術後1年を経た現在も再発なく元気に社会復帰している.
心タンポナーデを繰り返し,重篤な状態に陥り,心膜切除によって診断・治療が可能となった結核性心膜炎の1例を経験した.本症例では心嚢水のADA値以外に結核を疑う所見に乏しく,診断・保存的治療は非常に困難であり,示唆に富むと思われるので報告した.

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