2005 年 37 巻 12 号 p. 1027-1033
症例は67歳,男性.1995年5月に狭心症を診断.左回旋枝に冠動脈形成術を施行した.この時,左前下行枝より流入する2.4×2cm大の冠動脈瘤を認めた.以降定期的に外来で経過観察の方針とした.自覚症状などはないものの,2004年1月の胸部CT検査にて瘤の増大傾向(3×3cm)を認めた.冠動脈造影上,左前下行枝より流入する瘤であることは確認できたが,流出部位を同定するに至らなかった.しかし,multislice spiral computed tomography(MSCT,Aquillbn16,Toshiba)において主肺動脈へ帰する流出部を確認した.瘤が増大傾向を示していること,冠動静脈瘻の解剖構造が複雑であることから, 手術療法を選択し, 同年3月に人工心肺下にて瘤摘出術を施行した. 術後の経過は良好であった.
MSCTは冠動脈造影と比較しても低侵襲,簡便,低コスト,三次元の画像構築により解剖構造をより鮮明に理解できるといった利点があり,冠動静脈瘻の診断に有用な検査であった.