抄録
【背景】高槻市では2002年10月から院外心肺停止症例に対してドクターカー(特別救急隊)が出場するシステムが開始された.
【目的】特別救急隊が心原性院外心肺停止症例の予後に及ぼす影響を検討すること.
【方法】2002年10月から2004年12月の間に発生し,救急隊現場到着時すでに心肺停止状態にあった心原性院外心肺停止症例を2次救命処置が現場で施行された48例(特別救急隊群)と病院搬送後に施行された132例(所轄救急隊群)に分け,初回除細動までの時間,覚知から患者が医師の管理下に入るまでの時間,自己心拍再開率,1カ月生存率および社会復帰もしくは家庭内自立率などを比較した.
【結果】初回除細動施行までの時間はいずれの群でも平均で8分以上を要していた(特別救急隊8.2分vs所轄救急隊9.9分,p=0.295).医師が現場へ赴くことで覚知から患者が医師の管理下に入るまでの時間は約15分短くなった(8.7vs24.1分,p<0.001).また,自己心拍再開率(28.0vs357%,p=0.339),1カ月生存率(8.3vs7.6%,p=1.000)に全く差を認めなかったが,社会復帰もしくは家庭内自立率は約3.5倍特別救急隊群で高かった(8.3vs2.3%,p=0.083).
【結論】早期除細動に対する社会的システムが欠如した現状において,特別救急隊は心肺停止状態から蘇生された院外心肺停止症例の神経学的後遺症を減らす可能性が示唆された.