心臓
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HEART's Original [臨床研究] 拡張不全による慢性心不全の評価における123I-MIBG心筋シンチグラフィの有用性
田中 玄紀古財 敏之浦部 由利
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2007 年 39 巻 5 号 p. 438-446

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抄録

123I-metaiodobenzylguanidine(MlBG)心筋シンチグラフィによる心臓交感神経機能評価は,左室収縮不全を伴う慢性心不全の重症度,予後評価に有用であるが,左室拡張不全にもとづく慢性心不全における意義は明らかでない.われわれは左室拡張不全にもとづく慢性心不全症例における123I-MIBG心筋シンチグラフィの有用性を検討した.慢性心不全の診断にて入院した連続92症例について拡張不全群(左室駆出率>50%,n=47)および収縮不全群(左室駆出率<50%,n=45)にわけ,慢性心不全のない対照群(平均左室駆出率67.1%,n=30)と比較した.3群において123I-MIBG心筋シンチグラフィを行い,後期像心/縦隔比(delayed heart to mediastinum ratio)(以下,後期H/M比),洗い出し率(washout rate;WR)を測定し,入院時血漿BNP値,NYHA分類とともに比較を行った.拡張不全群は対照群と比較して, 有意な後期H / M 比の低下(1.91±0.45 vs 2.95±0.44, p<0.001) と,WRの亢進(50.8±17.4 %vs27.7±10.7%,p<0.001)を認め,収縮不全群のそれらと比較していずれも有意差を認めなかった.一方,拡張不全群と収縮不全群間において入院時血漿BNP値,NYHA分類は有意差を認めなかった.これらより,拡張不全群において心臓交感神経機能は収縮不全群と同程度に障害されていると考えられた.また拡張不全群において,NYHA分類による重症度は後期H/M比,WRいずれとも有意な関連を示した(NYHA分類IIvsIV,後期H/M比:2.05±0.50vs1.32±0.22,p=0.013.NYHA分類II vs IV,WR:43.0±18.8%vs75.0±7.8%,p=0.003).一方,心房細動合併症例においてWRは入院時血漿BNP値の対数変換値と有意な正相関を示した(p=0.025,R=0.588).こよれらより,123I-MIBG心筋シンチグラフィによる心臓交感神経機能評価は,左室拡張不全にもとづく慢性心不全症例の重症度評価に有用と考えられた.

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