2007 年 39 巻 Supplement1 号 p. 20-26
背景:冠攣縮性狭心症(VSA)に合併する致死的心室性不整脈は,本邦ではしばしば心臓性突然死の原因となり,不整脈発生機序を解明することは極めて重要である.一方,動物実験モデルにて,急性心筋虚血により一過性外向きK+電流(Ito)を介する心外膜細胞の活動電位ドームが減弱することにより,phase 2 reentryを誘発することが報告されている.
方法:対象は冠攣縮狭心症患者10例,男性10例,平均年齢57±11歳とした.全例,ホルター心電図記録にて狭心症発作に伴うST上昇を認め,その際に心室頻拍(VT)を合併した.記録された30VTを対象として,(1)VTのQRS波形(多形性,単形性),(2)VT出現時のR on T期外収縮による開始の有無,(3)VT出現前のST上昇波形(saddle-back型,coved型)および陰性T波の有無について検討した.
結果:30VT中,18VTのQRS波形が多形性であり,残り12VTではQRS波形は単形性を示した.前者では後者に比較し,R on Tおよび陰性T波増強が高率には認められ,ST上昇波形はBrugada型を呈する頻度が高かった.結語:VSAにおける多形性VTの機序として,発症様式やST-T波形変化より,急性心筋虚血により心外膜細胞の活動電位ドームの減弱が生じ,phase2 reentryを誘発されたことが推測された.