心臓
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HEART's Original [症例] 肺動脈血栓塞栓症を合併したKlinefelter症候群の1例
上村 竜太青木 亜佐子渋井 俊之細川 雄亮時田 祐吉宗像 亮福島 正人堀江 格小谷 英太郎中込 明裕草間 芳樹新 博次
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2008 年 40 巻 2 号 p. 132-137

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抄録

症例は48歳,男性.2006年9月に突然の呼吸苦と胸痛を自覚,ショック状態のため当院へ入院となる.身体所見より精巣萎縮,陰毛の減少,陰茎発育不良が認められ,血液検査にてテストステロン低値,ゴナドトロピン高値が観察された.性染色体解析により47XXYが検出されKlinefelter症候群と確認された.胸部造影CTにて肺動脈主幹部に巨大な血栓を認め,肺血流シンチグラムでは右中葉と下葉の一部,左中葉の一部に陰影欠損を認めた.下肢静脈造影にて両側の下肢静脈に陰影欠損を認め,Klinefelter症候群に合併する静脈血栓症が原因の肺動脈血栓塞栓症と診断された.下肢静脈血栓と肺動脈内の多量血栓に対して,ワルファリン内服開始とウロキナーゼ96万単位/日の静脈注射を5日間施行した.治療により症状は軽快し,2週間後に施行した胸部造影CTでも肺動脈内の血栓はほぼ消失した.Klinefelter症候群は性染色体異常に起因する原発性性腺機能低下症で,その発生頻度は総人口の0.1~0.2%であるとされ,性染色体異常疾患のなかで最も頻度の高い疾患といわれている.正常健人(男性)に比べ約5~20倍の頻度で静脈血栓塞栓症が発症すると報告され,その原因として(1)下肢静脈内皮の沈下性潰瘍,(2)凝固線溶系因子の遺伝子異常により持続した凝固亢進状態が考察されている.本例は明らかな凝固線溶系因子の異常は認められず,沈下性潰瘍が原因と思われる静脈血栓塞栓症と考えられた.

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