心臓
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HEART's Original [症例] 肺動脈血栓塞栓症の治療中にヘパリン起因性血小板減少症に伴う血栓症を合併した1例
岡田 薫草間 芳樹小谷 英太郎石井 健輔宮地 秀樹時田 祐吉田寺 長中込 明裕新 博次
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2008 年 40 巻 4 号 p. 373-378

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抄録

症例は66歳,女性.既往に胆石症あり.呼吸困難を主訴に当科を受診.低酸素血症(PaO2 61mmHg),血清Dダイマー高値(10.35μg/mL),心臓超音波検査で右心室の拡大,胸部造影CTにて両側肺動脈に血栓を認め,肺血栓塞栓症と診断.ウロキナーゼ240,000単位/日,ヘパリン12,000単位/日の持続静注を開始.翌日の肺動脈造影検査にて両側肺動脈に血栓を認め,血栓溶解療法,血栓破砕,吸引術を施行し,右下肢深部静脈血栓に対して一時的下大静脈フィルターを挿入した.ヘパリン持続静注により第12病日に血小板数が11.9×104/μLに減少,Dダイマーが124.4μg/mLまで上昇し,下大静脈造影検査でフィルター遠位部が血栓により完全閉塞していた.ウロキナーゼを増量しても改善せず,ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)に伴う血栓症を疑い,第18病日にヘパリンを中止したところ,血小板数31.9×104/μL,Dダイマー1.54μg/mLに改善し,フィルター内の血栓は消失した.抗ヘパリン第4因子複合体抗体が陽性であり,血栓症を伴ったHITと診断した.ヘパリンは循環器疾患の診療において広く使われているが,重大な合供症であるHITに関してはいまだ十分に周知されていない.ヘパリンの使用中には,血小板数の推移を観察し,HITが疑われた場合,直ちに適切な対応を行うことが必要である.

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