心臓
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HEART's Original [臨床研究] 心膜穿刺を施行し得た癌性心膜炎の予後調査―より安全な心膜穿刺法の提唱
荒尾 正人北原 康行説田 浩一
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2008 年 40 巻 8 号 p. 691-697

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抄録
背景:進行癌患者に認められる癌性心膜炎は一般に大変予後不良な状態と考えられており,心タンポナーデの状態となった際に,心膜穿刺ドレナージなどの治療を施されることなく,そのまま死亡となる症例も少なくない.これは手技に伴う高い致命的な合併症発生率が関係していると思われる.心膜穿刺後の予後を調査し,予想を上回る余命が確認された.
方法:2002年8月より2006年8月までの49カ月間に心タンポナーデのためNYHA分類W度の心不全を有し,心膜穿刺ドレナージを施行し得た癌患者25例(男15例,女10例,初回穿刺平均年齢62±9歳)初回穿刺から調査日2007年5月10日までの生存日数を調査した.
結果:全体25例での平均生存日数は387±359日(最長生存例1,371日)生存期間中央値は374日であった.調査日にてすでに死亡している症例は21例で平均生存日数は312±338日,生存症例は4例で平均生存日数は657±334日.また生存日数が30日未満の3症例ではいずれも穿刺困難で排液量400mL以下であった.
結論:放置すれば余命がほぼゼロと思われる癌性心膜炎に対し施行した心膜穿刺の結果平均1年以上の生存が確認され,予後の改善に大きく寄与することが判明した.穿刺により十分な量の心膜液を排液することは心不全の改善のみならず進歩多様化する癌治療を受ける時間と機会を与えるものであり,きわめて有意義なことと考えられる.
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