2008 年 40 巻 9 号 p. 772-778
症例は77歳,男性.肺結核後遺症,慢性閉塞性肺疾患があり在宅酸素療法中であった.約1カ月前より呼吸困難が増悪したため加療目的に当院へ入院.心エコー図検査で拡張型心筋症を疑わせる高度の左室収縮機能低下を認めた.肺感染症の悪化とともに左心不全も増悪したため,抗生剤の投与,非侵襲的陽圧換気の導入,利尿薬の増量を行い,引き続きβ遮断薬(メトプロロール)を開始した.その結果,心機能の改善とともに全身状態も回復し,非侵襲的陽圧換気からの離脱が可能となった.MIBI心筋血流シングル・フォト・エミッションCTにて前壁心尖部寄りに欠損像を認め,冠動脈造影では左前下行枝#7の完全閉塞と回旋枝#13の90%狭窄が判明した.このことから本症例は広義の虚血性心筋症であると考えた.重症肺疾患を伴った虚血性心疾患症例ではあったが,β 遮断薬の導入が,心機能とともに呼吸機能の改善,さらには日常生活動作能力の回復にも奏効したものと考えられた.