心臓
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第17回体表心臓微小電位研究会 心室再同期療法(CRT)におけるマイクロボルトTWAの臨床的検討
橋本 賢一笠巻 祐二芦野 園子小船 雅義山田 健史大久保 公恵進藤 敦史杉村 秀三中井 俊子渡辺 一郎平山 篤志齋藤 穎小澤 友紀雄
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2008 年 40 巻 Supplement1 号 p. 29-32

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抄録

背景:両心室ペーシング(BV)療法は,NYHA III以上の症状を有する心不全を呈し,QRS幅130ms以上の左脚ブロック型の心電図を示す患者に対して,自覚症状の改善や心不全のイベントを減少させることが明らかになっている.しかしながら,BV療法は必ずしも心臓突然死を減少させるとは限らない.近年,心内膜と心外膜からの同時ペーシングすることによりQTが延長,およびQT dispersionが増大されることで,torsade de pointesが誘発されるという報告もなされている.一方,μVレベルT Wave Alternans(TWA)は心臓突然死の予知に対する有用性が示されているが,BV療法がTWAに及ぼす影響に関する検討は少ない.
目的:今回われわれは,高位右房(RA)pacing,BV pacing,右室(RV)pacing,左室(LV)pacingを施行し,それぞれのペーシングモードの違いがTWAに及ぼす影響について検討した.
対象と方法:連続16例(男性11),陳旧性心筋梗塞2例,拡張型心筋症14例(EF 32±5%)を対象として行い,TWAの検出はCH2000(Cambridge HeartTM)にて施行し,各ペーシングモードにおいてHR 70~120bpmまでペーシングレートを漸増させTWAの測定を行った.TWA陽性基準はalternans voltage(V alt)>1.9μVおよびalterans ratio>3が1分間以上持続する場合とした.
平均V alt,alternans ratioは,eVM,eVX,eVY,eVZ,V1~V6各誘導の平均値とした.
結果:TWA陽性率はBV pacing,RV pacing,LV pacingおよびRA pacingで73%,50%,60%および60%であった.平均V altはBV pacing,RV pacing,LVpacingおよびRA pacingで2.19±0.5,0.36±0.3,1.41±0.2および2.01±0.6(p<0.05 BV vs RV).alternanas ratioはBV pacing,RV pacing,LVpacingおよびRA pacingで8.24±3.7,6.91±65および6.15±1.8,7.36±2.1(n.s.)BV vs RV.
結語:BV pacingによる高いTWA陽性率は再分極の不均一性の増大をもたらす可能性を示唆し,更なる機序の解明が必要である.

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