2008 年 40 巻 Supplement4 号 p. 5-11
症例は合併奇形のない修正大血管転位の36歳,女性.動悸発作のため電気生理学的検査を施行.解剖学的左室刺激で減衰伝導特性を有し冠状静脈洞(CS)入口部が最早期の室房伝導を認めた.順行伝導は2重伝導特性を認めなかった,イソプロテレノール投与下,右室2連期外刺激で周期340msecのlong R-P'頻拍が誘発.頻拍中の心房興奮順序は心室ペーシング時と変化なくヒス束不応期中の心室早期刺激によりリセットされないことより非通常型房室結節リエントリー性頻拍と診断.解剖学的左室刺激中の心房最早期興奮部位であるCS入口部付近の通電で心房興奮順序が変化し頻拍は誘発されなくなった.残存した弱い逆行伝導は右心耳の入ロ部付近が最早期興奮部位であった.修正大血管転位では前房室結節伝導路(anterior node)と後房室結節伝導路(posteriornode)があり通常後者は機能しない.本症例の房室結節リエントリー性頻拍はposterior nodeが関与し,anterior nodeを介する逆行伝導が残存したと考えられる.非通常型房室結節リエントリー性頻拍を合併した修正大血管転位の報告例はなく,考察を加え報告する.