抄録
Fallot四徴症,心房中隔欠損を伴った右肺静脈の下大静脈への還流異常の1例を報告する.患者は9歳の男児で生後まもなくチアノーゼ,先天性心疾患を指摘された.2歳でFallot四けた.徴症の診断をうけて後,無酸素発作,喘息様発作など著しいため,4歳の時Blalock短絡手術を受入院時軽いチアノゼが認められた.胸部X線像ではScimitar sign および dextroposition (心の)は明らかでなく,断層写真にてScimitar sign 確認,またシソチグラムにて肺血流量の左右差を認めた.聴診所見,心電図,心カテーテル法などでも右肺静脈還流異常の存在は明らかでなく,最終的にシネアンギオグラムにて下大静脈への還流異常を証明できた.体外循環時間の延長による危険性を重視し Fallot 四徴症および還流異常を2度にわたって,外科的に修復した.右肺静脈還流異常に対し心房中隔欠損部一下大静脈への開口部間に右房内トソネル作成術,また右肺静脈開口部および右房前下壁に心膜パッチを用い狭窄を防いだ.手術操作は開口部位置,血液逆流などのため困難なものであった.