抄録
15歳の男子症例で,上気道感染麗患時心尖部収縮期雑音を指摘されたが,その5ヵ月後に右下腿に動脈塞栓を生じた.心カテーテル検査などで僧帽弁狭摩症兼亜急性細菌性心内膜炎と診断されたが,進行性の治療に抗するうっ血性心不全に移行した.それとともに貧血と黄疸の発現がみられていたが,約6ヵ月の入院期間中に3回にわたり,黄疸の増強,赤血球の形態異常,網状赤血球増加を伴う溶血性貧血,出血傾向を伴う血小板減少症および白血球減少などの汎血球減少症の発作がみられた.また発熱,全身倦怠,血沈促進,CRP陽性,肺感染症,狭心症様発作などの多彩な全身症状を呈した.剖検で巨大な左房殺液腫の形成,左冠状動脈の閉塞性内膜炎,左室前壁心筋破室癩痕',肺動脈の閉塞性内膜炎,肺の線維化,多数の心臓障害細胞を認め,肺高血圧の存在を示す所見がみられた.