抄録
就学前児童の心臓検診において,心内奇形のない先天性完全房室ブロックの1例と修正大血管転換症に合併した高度房室ブロックの1例を認めた.両者のHis束心電図では,ともにA波はH波を伴わず,H波とV波とは連結を示す His束より近位のブロックを思わせた.心内奇形のない症例では,さらに硫酸アトロピン負荷では,A-A間隔,H-H間隔はともに短縮をきたしたが,依然として完全房室ブロックの状態を続けた.心室内ペーシングには良く反応したが,右房ペーシングは無効であった.修正大血管転換症の合併例はHis束心電図の記録中に偶然捕捉収縮が認められた.この際の所見は,A-H間隔188~180msec,H-V間隔24msecとA-H間隔の延長が認められた.表面心電図上QRS幅は正常で,心室拍数は45~50/分,60/分であった.