【Background and Aims】
これまでに腸管Behcet病(BD)および単純性潰瘍(SU)に対する生物学的製剤の有用性が報告されているが、多数例での生物学的製剤の短期および長期治療成績についての報告は少ないのが現状である。当院におけるBDおよびSUに対する生物学的製剤の短期および長期治療成績を明らかにすることを目的に単施設、後ろ向き研究を行なった。
【Methods】
当院にて加療を行ったBDおよびSU32例のうち、生物学製剤を投与した13例(男性13例, 女性1例, 腸病変の診断時平均年齢36.2歳, 導入時平均年齢44.2歳, 病型BD5例, Suspected BD7例, SU1例, 手術歴あり5例, 生物学的製剤の種類(IFX9例, ADA4例) を対象に、1. 短期治療成績として生物学的製剤投与後2~3か月後に臨床項目(症状、CRP)を評価し、有効、無効に分類し、臨床的有効率を求めた。臨床的背景(性別、腸病変の診断時年齢、生物学的製剤導入時年齢、病型、手術歴、HLA-B51、生物学製剤の種類、併用薬剤、CRP)と形態学的所見(潰瘍の数、部位、形態)を検討項目とし、有効群と無効群で比較検討した。2. 長期治療成績として生物学的製剤投与後12か月とその後追跡調査可能な範囲(平均観察期間:20ヶ月)での、維持効果を評価し、背景因子で検討した。
【Results】
1. 短期治療成績は、有効例10例(76.9%), 無効例3例(23.1%)であった。有効群は無効群と比較し、統計学的有意差をもってCRPが低かった。
2. 長期治療成績:12か月後の維持効果は100%(7/7例)、その後の追跡調査では、5例(71.4%)が維持投与可能であった。維持可能症例は、手術歴がない症例が多かった(75%)。
【Conclusions】
BDおよびSUにおける生物学的製剤は有用であり、特にCRPが低いものに有用であった。また、長期的にも生物学的製剤の有用性が示され、特に手術歴のない症例で有用であった。