日本小腸学会学術集会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2434-7019
Print ISSN : 2434-2912
第56回日本小腸学会学術集会
セッションID: S1-6
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シンポジウム1 治療法未確立の難治性小腸疾患に対する挑戦
乳児期に発症した原発性腸リンパ管拡張症の一例
*京戸 玲子清水 泰岳竹内 一朗新井 勝大
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抄録

【はじめに】

原発性腸リンパ管拡張症は先天的なリンパ管系の形成不全によりリンパ管が鬱滞し二次的に蛋白漏出性胃腸症(PLE) を引き起こす比較的稀な疾患で、長期にわたり治療を要する難治例が多い。

【症例】

現在10歳の女児。生後5か月から下痢が持続し、6か月時に無熱性痙攣を発症した際、低Alb血症、低Ca血症を認め、精査目的に当院へ紹介となった。便中α1-AT濃度の上昇、99mTc-HSAで核種の小腸への排泄を認め、また内視鏡検査で十二指腸に多数の白斑、組織学的に拡張したリンパ管構造を多数認め、PLEを合併した原発性腸リンパ管拡張症と診断した。治療として高蛋白低脂肪食、中鎖脂肪酸の投与、クロモグリク酸ナトリウムの内服、定期的な脂肪製剤やAlb製剤の静注を開始した。根治治療はなく10歳となった現在も同治療を継続しており、成長発達は正常だが1日に数回の下痢や全身性の浮腫は持続している。再評価のため施行した小腸カプセル内視鏡検査でも小腸全域に著明な白色絨毛を認め、病勢は持続していると考えられた。

【結語】

近年の遺伝子解析技術の進歩に伴い網羅的な遺伝子の解析が可能となり、遺伝子疾患の診断に役立てられている。リンパ管系の異常を来す疾患やPLEにおいても単一遺伝子疾患の報告があり、本症例においても病態の解明や新規治療の検討につながる可能性があり、今後遺伝子検査を行う意義があると考える。

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© 2018 本論文著者
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