【目的】 これまでに低用量腸溶剤アスピリン(LDA)による消化性潰瘍および上部消化管出血と関連する臨床背景因子および遺伝子多型の検討を行ってきた。さらに薬物代謝・トランスポーター遺伝子解析用マイクロアレイ(DMET plus)を使用し、網羅的SNP解析により同定したCYP4F11(rs1060463)の関連性を報告した(PLoS One. 2013 18;8:e84244)。今回LDA内服患者における小腸出血関連因子について、症例を追加し検討した。
【対象および方法】 カプセル内視鏡検査を行い小腸粘膜傷害による小腸出血が疑われた長期LDA内服患者を小腸粘膜傷害群とし、長期LDA内服患者で消化管出血歴がなく、内視鏡検査で消化性潰瘍を認めない患者を対照群とした。臨床背景因子との関連性について検討し、さらに網羅的SNP解析により有意な関連性が得られたSNPsについてTaqMan SNP Genotyping Assayあるいはダイレクトシークエンス法により検討した。
【成績】 対象は小腸粘膜傷害群44例と対照群427例。小腸粘膜傷害と有意な関連性が認められたのは、喫煙、脳血管疾患、NSAIDsあるいはワルファリン併用、CYP4F11 20043G > A(D446N)rs1060463、CYP24A1 18948C > T rs4809957であった。多変量解析の結果、喫煙、脳血管疾患、ワルファリン併用とともにはCYP24A1 18948C > T rs4809957が有意に関連した。PPIとの関連性は認めなかった。
【結論】喫煙が最も有意なLDA起因性小腸粘膜傷害の危険因子であり、CYP24A1 SNPは小腸出血の予測マーカーとなる可能性が示唆された。