日本小腸学会学術集会プログラム・抄録集
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第57回日本小腸学会学術集会
選択された号の論文の67件中1~50を表示しています
主題セッション1 小腸疾患の診断・治療における内視鏡の進歩
  • 林田 真理, 三好 潤, 和田 晴香, 尾崎 良, 菊地 翁輝, 徳永 創太郎, 箕輪 慎太郎, 三井 達也, 三浦 みき, 齋藤 大祐, ...
    セッションID: S1-1
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【背景】 ベーチェット病(BD)の小腸を含む消化管病変の合併率は10-15%と報告されている。小腸病変については腸管BD患者における検討はあるが、BD患者における小腸病変のスクリーニングの重要性は確立していない。

    【目的】 小腸用カプセル内視鏡(CE)を用いて小腸病変をスクリーニングし、BD患者における小腸病変存在の予測因子を検討する。

    【方法】 2016年4月から2018年3月に当院通院中のBD患者で、本研究への参加に同意した27例(男女11:16名、中央値41歳)を対象とした。CEで観察した小腸病変について健常人145名の既存データ(Fujimori et al, J Clin Gastroenterol. 2016)と比較検討した。小腸病変予測因子の探索のため、年齢、性別、罹病期間、Body Mass Index、消化器症状、眼病変、血液検査(白血球、貧血、アルブミン、CRP)、便潜血、便中カルプロテクチンについて検討した。(杏林大学医学部倫理委員会承認番号694-01)

    【結果】 小腸病変(びらん及び潰瘍)数についてBD患者と健常人で比較したところ、BD患者3.07 ± 1.46、健常人0.32 ±0.12(p < 0.0001)であった。本結果よりCEにて1個以上の小腸病変を認めた場合にはBDに合併する小腸病変を有すると定義した。小腸病変の有無についてROC曲線解析より便中カルプロテクチン検査のカットオフ値を119μg/gと設定すると、感度100%、特異度88.9%、陽性的中率80%、陰性的中率100%であり、他の因子よりも優れていた。

    【結論】 BD患者は健常人よりも小腸病変を多く有することがCEにより明らかとなった。便中カルプロテクチン測定は、CE適応患者の絞り込みに有用であると考えられた。

  • 宮津 隆裕, 石田 夏樹, 田村 智, 高野 亮佑, 谷 伸也, 鏡 卓馬, 山出 美穂子, 濱屋 寧, 岩泉 守哉, 大澤 恵, 古田 隆 ...
    セッションID: S1-2
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【目的】 小腸カプセル内視鏡は2015年より18歳未満の小児にも適応拡大され、小児領域でもカプセル内視鏡が普及しつつあるが、疾患背景や検査方法、観察成績など、未知の領域が多い。今回我々は、小児領域における小腸カプセル内視鏡の検査成績について検討した。

    【方法】 2009年4月から2019年2月までに当院で施行された18歳未満の小児例対する小腸カプセル内視鏡検査18症例22検査について、年齢、疾患、カプセルの投与方法、全小腸観察率、洗浄度を検討した。

    【成績】 症例は男児10症例13検査、女児8症例9検査で、未就学児2症例5検査、小学生4症例5検査、中学生5症例5検査, 高校生7症例7検査であった。検査理由は、炎症性腸疾患7症例7検査、OGIB4症例5検査、腹痛精査2症例2検査、小腸重積精査1症例1検査、炎症性腸疾患以外の腸炎精査4症例7検査であった。全例パテンシーカプセルまたは小腸造影検査で開通性を事前に確認された。全体の4例(22.2%) は、鎮静下に上部内視鏡を用いてカプセルの誘導を要したが、小学校高学年以上の症例はカプセルの内服が可能であった。滞留率0%で時間内全小腸観察率100%であった。有所見率は63.6%であり、炎症性病変が多かった。

    【結論】 小腸カプセル内視鏡は小児の小腸疾患の精査において、低年齢で内視鏡誘導が必要なものの, 安全かつ有用な検査と考えられた。

  • 前田 晃平, 小山 恵司, 尾崎 隼人, 大森 崇史, 城代 康貴, 小村 成臣, 鎌野 俊彰, 長坂 光夫, 中川 義仁, 大宮 直木
    セッションID: S1-3
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【目的】 小腸カプセル内視鏡(SBCE)のPillCamSB3(SB)はAdaptive frame rate(AFR)機能を搭載し、読影時間の短縮が期待される。エンドカプセルEC-10(EC)は固定FRだがオムニモード(EC(OMNI))を搭載している。2類のSBCEを初学者と熟練者の2人で読影した症例について診断能、読影時間を比較する。

    【方法】 対象は2016年1月~2018年2月にエントリーされた39例の内、初学者と熟練者2人で読影した12例。性・年齢による無作為割付で一方のSBCEを内服させ、幽門通過後に他方を内服、両者が大腸に到達した時点で検査を終了した。初学者と熟練者の読影時間および所見検出数を比較した。

    【結果】 小腸読影時間はSBが初学者:17.9-51.1(中央値33.2)分、熟練者:10.6-26.4(18.8)分(p = 0.002)、EC(OMNI)が初学者:10.4-40.7(22.8)分、熟練者:6.5-35.5(12.8)分(p = 0.028)、EC(通常)が初学者:23.2-67.9(42.7)分、熟練者:8.6-41.8(26.3)(p = 0.009)だった。SB、EC(OMNI)、EC(通常)間の読影時間の比較では初学者:EC(OMNI)はSB、EC(通常)より有意に速かった(p = 0.021)(P < 0.001)。熟練者:EC(通常)はSB、EC(OMNI)より有意に遅かった(p = 0.038)(p = 0.001)。所見検出総数はSBが初学者:159個、熟練者:75個、一致数:53個(p = 0.082)。ECが初学者:155個、熟練者:109個、一致数:70個だった(p = 0.340)。

    【結論】 全ての読影において熟練者が初学者よりも有意に速かった。所見検出数は初学者と熟練者間で有意差はなく読影に時間をかければ初学者でも熟練者に遜色なく診断ができる可能性が示唆された。

  • 高林 馨, 林 由紀恵, 福田 知広, 吉松 裕介, 吉田 康祐, 杉本 真也, 南木 康作, 福原 佳代子, 三上 洋平, 筋野 智久, ...
    セッションID: S1-4
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【背景】 クローン病(CD)における粘膜治癒評価のための内視鏡スコアには深部小腸の評価は含まれておらず、深部小腸病変の臨床的意義は不明である。そこで今回、クローン病におけるバルーン内視鏡を用いた深部小腸評価の意義につき検討した。

    【方法】 2012年1月から2017年7月までに経肛門的シングルバルーン内視鏡が施行されたCD患者142例のうち、臨床的寛解(CRP < 0.3mg/dlかつHarvey Bradshaw Index < 5)と定義された62例を対象とした。小腸を回盲弁もしくは吻合部から20cmまでを回腸末端、それ以深を深部小腸と定義し、回腸末端ではpartial SES-CDスコアを、深部小腸では改変したmodified SES-CDスコアを用いて内視鏡的評価を行った。内視鏡検査施行から1年以内の入院率、および入院の危険因子に関して後方視的に検討した。

    【結果】 内視鏡検査後1年以内の入院となった患者は20例(32.3%)であった。入院の内訳は小腸イレウス15例(75.0%)、元病増悪3例(15.0%)、腹腔内膿瘍2例(10.0%)であった。多変量ロジスティック回帰分析では、Harvey Bradshaw Index(OR3.08、95%CI1.41-6.75; p = 0.005)、modified SES-CDスコア(OR3.39、95%CI1.72-6.63; p = 0.001)、が独立した入院の予測因子であった。深部小腸におけるmodified SES-CDスコアと入院率には有意な相関傾向を認めたが(p < 0.05)、回腸末端おけるpartial SES-CDスコアと入院率の間に相関は認めなかった。

    【結語】 CDの内視鏡的粘膜評価においては回腸末端だけでなく深部小腸病変も含めた評価が必要である可能性が示唆された。

  • 竹中 健人, 大塚 和朗, 鈴木 康平, 日比谷 秀爾, 清水 寛路, 本林 麻衣子, 福田 将義, 小林 正典, 藤井 俊光, 齊藤 詠子 ...
    セッションID: S1-5
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    クローン病(CD)において小腸の評価は必須であり、当施設では病変精査および狭窄拡張のため、2012年よりCDに対してシングルバルーン内視鏡(SBE)による病変評価を開始し、2019年5月まで1303例施行している。CDの小腸内視鏡スコアは存在しないため、SES-CDを改変し、小腸を回盲弁からの距離によって、回腸末端(20cmまで)・深部回腸(20-300cm)・空腸(300cm以深)の3つの領域に分け評価している。

    SBEは一人法で行われ、経口挿入は5%、経肛門挿入は95%であった。経肛門挿入例では、深部回腸・空腸・胃へそれぞれ99%・34%・6%が到達した。挿入距離の中央値は回盲弁より150cmであった。また77%は外来でSBEが行われた。

    潰瘍性病変は回腸末端では39%・遠位回腸では51%・空腸では8%にそれぞれ検出された。CD病変とCDAIとの相関係数は0.11であり、CRPとの相関係数は0.23であった。小腸の狭窄は47%に、内視鏡の通過しない高度狭窄は22%に、内瘻は8%に認めた。狭窄拡張は19%(249/1303)に対して施行された。MREが同時に行われた782症例を対象とすると、MREで狭窄が指摘された196例のうち、86%でSBEでも検出できた一方、14%では病変まで挿入できなかった。MREでは狭窄が指摘されなかった586例のうち、SBEでは37%で狭窄を、12%で高度狭窄を認めた。

    深部小腸にも病変は存在し、小腸病変はCDAIやCRPとは相関しないため、SBEにより深部小腸を評価することは重要であった。MREでは全小腸評価が可能であるが、狭窄性病変については、拡張術も可能なSBEが特に有用と考えられた。

  • 福定 繁紀, 片岡 洋望
    セッションID: S1-6
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【目的・方法】 当院で2004年4月から2019年5月の間に、病理診断がついた小腸悪性腫瘍(十二指腸を除く)65例を対象に、臨床的特徴と小腸内視鏡の有用性を明らかにすることを目的として後ろ向きに検討した。

    【結果】 内訳は、小腸癌11例、GIST15例、悪性リンパ腫25例、転移性腫瘍12例、カルチノイド1例、神経内分泌細胞癌1例であった。治療法は、外科的治療56例、化学療法38例(重複あり)であった。診断契機が穿孔(8例)、イレウス(7例)、腸重積(2例)、血便(2例)の症例があり、外科的治療のうち13例で緊急手術が施行されていた。ダブルバルーン内視鏡(DBE)は、18例のべ23件、カプセル内視鏡(CE)は6例で施行されていた。初回のDBEでの生検の診断率は66.7%(10/15件)、2回目も合わせた診断率は73.7%(14/19件)だった。悪性リンパ腫25例中11例でDBEが施行され、8例で生検によって診断がつき(72.7%)、その後の治療方針決定に有用であった。DBEを施行した症例で偶発症は認めなかった。CEでは83.3%(5/6)で病変が描出されていたが、CEが腫瘍部で6日間停滞した症例があり、DBEで回収した。

    【結論】 CEは小腸悪性腫瘍の描出に有用であるが、腫瘍部で通過困難となることがある点に注意が必要である。DBEは小腸悪性腫瘍の組織診断も含め、診断に有用であり、複数回のDBEで診断がつくことがあること、偶発症が少ないことから、小腸腫瘍の診断目的で積極的に考慮すべきと思われた。

  • 高峰 航, 澤辺 一生, 新倉 量太, 山田 篤生, 小池 和彦
    セッションID: S1-7
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【目的】 小腸カプセル内視鏡検査には、診断精度が医師の経験に大きく依存し、専門医でも読影に長時間を要するという問題点がある。これらの問題を解決するために、人工知能を用いた、カプセル内視鏡自動診断システム(FindLesion)を開発した。

    【方法】 2009-2018年に東京大学医学部附属病院で行われた小腸カプセル内視鏡検査データ401人(6068枚の正常画像と1395枚の病変画像(びらん・潰瘍、腫瘍))を使用した。データを教師用・テスト用・評価用のデータセットに分割し、教師用・テスト用データを用いて、カプセル内視鏡画像を正常・有病に分類するために、畳み込みニューラルネットワークを用いてモデルの訓練を行った。モデルは、カプセル内視鏡学会専門医が診断した画像をGold standardとしてReceiver Operatorating Characteristic curve、Area under the curve(AUC)を用いて評価した。

    【結果】 評価用データセット(782枚)の画像のAUCスコアは0.96であった。FindLesionが診断に要した時間は1症例あたり18秒であった。偽陰性症例(病変があるのに正常と判定)は、画像に淡赤色の潰瘍病変を認めた症例であった(写真1)。偽陽性症例(正常であるのに有病と判定)は、気泡や残渣が写り込んだ画像・小腸粘膜全体が赤色調の画像であった(写真2)。

    【結論】 実臨床の活用に用いることができる、高精度のカプセル内視鏡自動診断システム、FindLesionを開発した。今後、ランダム化比較試験による検証を行う必要がある。

  • 壷井 章克, 岡 志郎, 田中 信治, 齋藤 宏章, 松田 知己, 青木 智則, 山田 篤生, 多田 智裕
    セッションID: S1-8
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【目的】 小腸angioectasiaの取り扱いとAI(artificial intelligence)による小腸angioectasiaの検出能について当科の治療成績から検討した。

    【方法】 検討1)2007年8月~2018年3月に当科でCEかつ/またはダブルバルーン内視鏡にて小腸angioectasiaと診断(適応病変は治療)し1年以上経過観察した91例194病変を対象とした。検討2)CE画像を使用し、deep learningを用いて教育したconvolutional neural network(CNN)のangioectasiaに対する検出能を検討した。

    【結果】 検討1)Type 1a(oozingなし)41例は全て無治療経過観察、Type 1a(oozingあり)17例とType 1b 33例はpolidocanol局注法主体の内視鏡治療を施行した。小腸angioectasia多発が再出血の有意な因子であったが、無治療経過観察群に再出血を認めなかった。検討2)2,237枚のangioectasiaの静止画で教育したCNNを用いて、正常画像10,000枚と488枚のangioectasiaで検出能を評価し、感度98.8%、特異度99.1%、陽性的中率84.3%、陰性的中率99.9%であった。読影時間は323秒であった。

    【結論】 小腸angioectasiaのうちType 1a(oozingなし)は無治療経過観察で問題なく、AIはCE読影の負担軽減に寄与すると考えられた。

主題セッション2 難治性小腸疾患の診断と治療
  • 齋藤 大祐, 松浦 稔, 尾崎 良, 菊地 翁輝, 徳永 創太郎, 箕輪 慎太郎, 三井 達也, 三浦 みき, 櫻庭 彰人, 林田 真理, ...
    セッションID: S2-1
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【背景と目的】 家族性地中海熱は周期性発熱と漿膜炎を特徴とする自己炎症性疾患であり、MEFV遺伝子が原因遺伝子として同定されている。近年、MEFV遺伝子変異を伴いIBD類似の内視鏡像を呈する症例が注目されているが、複数症例を検討した報告は少ない。そこで今回我々は、当院で経験したMEFV遺伝子変異を伴うIBDU患者の臨床像を後方視的に検討した。

    【方法】 2016年4月から2018年12月までに当院でIBDUと診断した8例についてMEFV遺伝子解析を行い、症状、遺伝子変異の有無、血清マーカー(CRP、SAA)、内視鏡像、コルヒチンに対する反応性について検討した。

    【結果】 症状は下痢(n = 8、100%)が最も多く、続いて血便(n = 3)、腹痛(n = 3)、発熱(n = 2)であった。MEFV遺伝子変異は4例(50.0%)に認められた。CRPは4例(50.0%)で有症状時に著明高値(≧10mg/dL)を示し、SAA は5例(62.5%)で陽性、その内2例で著明高値(1,830μg/dL、2,034μg/dL)を示した。大腸内視鏡所見はUC類似の所見に加えてrectal sparing、右側優位大腸炎、pseudopolyposis、顆粒状粘膜など多彩な病変であったが、いずれの症例も上部消化管および小腸に有意な所見を認めなかった。コルヒチンは5例(MEFV変異あり4例、MEFV変異なし1例)に投与され、全例で臨床的および内視鏡的改善を認めた。

    【結語】 IBDUと診断された患者の中にコルヒチンの奏功するMEFV遺伝子関連腸炎が混在している可能性がある。本研究では大腸病変を有する症例のみであったが、今後、他の消化管病変を有する症例も含めた更なる検討が必要と考えられた。

  • 渡辺 憲治, 飯田 智哉, 宮嵜 孝子, 樋田 信幸, 中村 志郎, 仲瀬 裕志
    セッションID: S2-2
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【目的】 MEFV遺伝子関連腸炎例の臨床背景、小腸病変を検討し、鑑別診断に寄与する。

    【方法】 2019年4月までに札幌医科大学でMEFV遺伝子解析を行った当科16例のうち、遺伝子変異を認めた10例を対象に、消化管病変、臨床背景等を検討した。

    【結果】 診断時年齢48.5(30-76)歳、発症時年齢39(25-71)歳、女性6例。症状は腹痛9例、下痢6例、血便4例、38℃以上周期的発熱6例、関節炎5例、結節性紅斑3例(全例exon2変異)、皮膚限局性アミロイドーシス1例を認めた。初期診断は分類不能腸炎4例、クローン病疑い4例、潰瘍性大腸炎2例等だった。変異はexon1が1例、exon2が5例、exon3が3例、exon5が1例だった。病変局在は胃6例、十二指腸4例、大腸6例で、竹の節状外観やノッチサイン、縦走潰瘍等の他、生検で肉芽腫やfocally enhanced gastritisを認めた例も存在した。小腸病変は7例で、回腸終末部病変6例、回腸主体の広範なびらん・潰瘍5例、ノッチサイン1例を認めた。コルヒチン投与7例は6例が有効ないし寛解で、抗TNFα抗体製剤が投与されていたexon2変異の2例は有効だった。狭窄性病変はなかった。

    【結論】 クローン病と鑑別を要する多彩な小腸病変を認めた。微細病変が多いためカプセル内視鏡が有用で、パテンシーカプセルの事前検査は不要と思われた。

  • 溝下 勤, 杉村 直美, 杉山 智哉, 戸川 昭三, 宮木 知克, 鈴木 健人, 尾関 啓司, 谷田 諭史, 佐々木 誠人, 片岡 洋望
    セッションID: S2-3
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【目的】 難治性腸管ベーチェット病(intestinal Behcet's disease; iBD)に対して抗TNF-α抗体製剤(anti-TNF)は重要な治療選択の1つと考えられている。しかし、実地臨床でのiBDに対するAdalimumab(ADA)とInfliximab(IFX)の投与状況・治療成績については不明な点が多い。今回、我々はiBD症例へのanti-TNF投与状況を検索し、その導入率・選択・治療効果を臨床的に検討した。

    【方法】 当院及び協力施設で治療を行ったiBD53例を対象とし、anti-TNF導入率を検索した。さらにanti-TNF治療を1年以上施行した症例について、anti-TNF投与前後の消化器症状(19例)と内視鏡所見(14例)を評価した。

    【結果】 iBD53例中、22例(42%)でanti-TNFが導入されていた。22症例について男性/女性=17例/5例、anti-TNF治療開始時の年齢中央値=43(15-72)歳、平均罹病期間=5.7(0.1-18)年であった。1st line-anti-TNFとして、14例でADA、8例でIFXを使用していた。22症例中、3例はanti-TNFが奏功せず、導入後12か月以内に外科的手術となった。消化器症状の完全消失率は、anti-TNF投与3か月後で7例(31.8%)、12か月後で11例(50.0%)であった。内視鏡的完全寛解率は、anti-TNF投与3か月後で5例(31.3%)、12か月後で9例(56.3%)であった。

    【結論】 anti-TNF治療は、高い消化器症状の完全消失率及び内視鏡的完全寛解率を示し、難治性iBDに対して非常に有効な治療手段と考えられた。

  • 城代 康貴, 尾崎 隼人, 大宮 直木
    セッションID: S2-4
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【目的】 再発性Clostridioides difficile感染症(RCDI)、潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)に対する糞便移植(FMT)の有効性とFMT前後の腸内細菌叢と短鎖脂肪酸の変化を解析した。

    【方法】 対象は2016年1月~2017年12月にFMTを施行した36例(RCDI4例、UC28例、CD4例)。FMT前に任意で抗菌薬投与を行いFMT前、8週間後に有効性を評価した。腸内細菌叢の構成と多様性は16SrDNAを次世代シーケンサーで解析した。また短鎖脂肪酸濃度の変化も解析した。

    【結果】 RCDIは4例中3例で培養が陰性化、全例で下痢の改善を認めた。腸内細菌は多様性が回復し門レベルの解析ではBacteroidetesの増加とFirmicutesの減少を認めた。短鎖脂肪酸はFMT後に乳酸が低下し酪酸や酢酸の増加を認めた。属レベルの腸内細菌の解析で酪酸産生菌であるClostridiumクラスターⅣ、XⅣaに属する菌の増加を認めた。UCは9例(33%)でMayo Scoreの改善を認め、腸内細菌叢の多様性はFMT前の時点でドナーと差がなくFMT前後で変化を認めなかった。門レベルの解析ではBacteroidetesの減少を認めた。短鎖脂肪酸はいずれも有意な変化を認めなかったが乳酸の軽度減少を認めた。CDは3例(75%)でCDAIの改善を認め、腸内細菌叢の多様性はFMT後に増加し門レベルの解析ではActinobacteriaの増加を認めた。短鎖脂肪酸は乳酸の減少と酢酸および酪酸の増加を認めた。属レベルの解析ではCDI同様に酪酸産生菌の増加を認めた。

    【考察】 FMTはCDI、CDに対し有効性が高くUCは限定的であった。CDI、CDでは酪酸産生菌が増加しており産生された酪酸や酢酸が有効性に影響を与えた可能性が示唆された。

  • 井上 健, 杉野 敏志, 廣瀬 亮平, 土肥 統, 吉田 直久, 鎌田 和浩, 全 完, 内山 和彦, 石川 剛, 高木 智久, 小西 英幸 ...
    セッションID: S2-5
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【目的】 重症大動脈弁狭窄症患者(以下AS)に合併した消化管出血はHeyde症候群と定義され、近年では、消化管angiodysplasia(以下AD)とVon Willebrand因子の質的異常を合併する疾患とされるが知見は限られている。近年、重症ASに対して低侵襲な経カテーテル大動脈弁留置術(以下TAVI)が開発された。本研究ではTAVIを施行した重症ASを対象とし、Heyde症候群の現状とTAVI施行前後での病態の変化について明らかにする。

    【方法】 単施設にて後ろ向き検討を行った。2016年4月~19年1月の間に当院にてTAVIを施行した患者を対象とした。TAVI施行前のHb値、内視鏡施行頻度、検査施行症例における活動性消化管出血・消化管ADの頻度などを検討項目とした。またTAVI施行後6ヶ月を経過した症例において、Hb値、消化管出血の頻度などを検討項目とした。

    【結果】 対象は178例、男性/女性;47/129例、平均年齢86歳、Hb中央値(範囲)は10.8(5.5-15.7)g/dlであり、96例(54%)に貧血を認めた。抗血栓薬を内服していた症例は、抗血小板剤43%(76/178)(Low-dose aspirin 38%(67/178)、Thienopyridine 21%(37/178))、DOAC 20%(36/178)、Warfarin 5%(9/178)であった。40例(23%)に上部内視鏡が施行され、7例に活動性出血を、4例にADを認めた。23例(13%)に大腸内視鏡が施行され、3例に活動性出血を、5例にAD認めた。3例(1.7%)にバルーン小腸内視鏡が施行され、2例にADを認めAPCによる凝固処置が施行された。TAVI施行前に貧血を有しTAVI施行後6ヶ月以上経過観察しえた症例は52例において、平均Hb値はTAVI前9.0g/dlからTAVI後10.7g/dlへと有意に上昇を認めた(p < 0.0001)。

    【結論】 重症ASにおいて約半数で貧血を認めた。内視鏡検査が施行されたのは2割程度であったが、比較的高い頻度で消化管ADを認めた。TAVI施行により有意に貧血の改善を認めた。

  • 中村 正直, 山村 健史, 前田 啓子, 澤田 つな騎, 水谷 泰之, 藤城 光弘
    セッションID: S2-6
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【背景・目的】 小腸内視鏡診断の進歩により腸リンパ管拡張症(Intestinal lymphangiectasia:IL)を含む蛋白漏出性腸症の小腸精査が可能になった。本研究の目的はILの臨床経過を後ろ向きに評価し、その特徴を明らかにしたうえでより良い治療法を模索することであった。

    【対象と方法】 対象は2003年6月から2019年6月までにILと診断された17例(男性9例、女性8例、発症年齢は中央値37歳、0-75歳)であった。ILの診断は蛋白漏出性腸症と診断され且つ内視鏡下生検もしくは剖検にて病理学的に腸リンパ管拡張を認めたもので、他疾患が否定的であったものとした。白色絨毛、散布性白点を有する白色絨毛群(WV)と、異常なしもしくは軽度絨毛腫大、ケルクリング襞腫大を認める非白色絨毛群(NWV)に分けて臨床成績を比較検討した。

    【結果】 WV、NWVは10例、7例であった。平均血清アルブミン値(g/dl)はWV:NWV = 2.0:1.2でNWVにおいて有意に低かった(P = 0.0061)。平均α1アンチトリプシンクリアランスはWV:NWV = 132:284(P = 0.0509)であった。ステロイド治療への反応はWV:NWV = 2/7:6/6 例でみられた。平均観察期間48箇月において1例のILが影響した死亡例を経験したが、重篤な真菌感染症によるものであった。

    【結論】 NWV群は蛋白漏出は多いがステロイドへの反応がWV群よりも良好であった。治療のゴールドスタンダードは存在せず可能な可能で効果があるものを続けることが現状であった。

  • 内藤 達志, 平松 活志, 並川 正一, 山本 有紗, 村田 陽介, 赤澤 悠, 野阪 拓人, 高橋 和人, 大藤 和也, 松田 秀岳, 大 ...
    セッションID: S2-7
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    Ⅱ型腸管症関連T細胞リンパ腫(enteropathy-associated T-cell lymphoma;EATL)は診断に難渋することが多く、消化管穿孔をきたして発症することの多い難治性小腸疾患である。今回われわれは異なる経過をたどったⅡ型EATLの2例を報告する。

    【症例1】 70歳代、男性 【主訴】 腹部膨満

    【現病歴】 発熱、腹痛のため紹介医を受診した。腹腔内遊離ガスを認めたが、穿孔部位は不明。低蛋白血症と腹水が出現し、当院紹介。

    【経過】 当院にて小腸カプセル内視鏡(CE)を施行したところ空腸に深掘れの縦走潰瘍が多発。活動期のCrohn病を疑いプレドニゾロンの静注を開始したところ症状は軽快した。7日後に再度腹痛と遊離ガスの出現を認め緊急手術。空腸に癒着と穿孔を2か所認め、病理学的にⅡ型EATLと診断された。化学療法を行ったが6か月後死亡した。

     

    【症例2】 60歳代、男性 【主訴】 下痢

    【現病歴】 1年前から持続する水様下痢の精査目的に当院に紹介となった。

    【経過】 CEを行ったところ近位空腸にびらんが多発しており、ダブルバルーン内視鏡では空腸に白苔を伴う広い円形潰瘍が多発していた。生検でⅡ型EATLと診断。化学療法を行い1年間生存している。

    【考察】 Ⅱ型EATLは診断が遅れると小腸病変が進行して消化管穿孔にて発症する。その場合は全身状態も不良で治療抵抗性である。一方、小腸内視鏡にて早期に診断できた場合、十分な化学療法を施行することが可能で予後が改善できる可能性がある。

主題セッション3 小腸疾患に対するトランスレーショナルリサーチ
  • 網谷 猛, 中本 伸宏, 入江 潤一郎, 褚 柏松, 谷木 信仁, 金井 隆典
    セッションID: S3-1
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【要旨】 II型糖尿病(T2D)は脂肪組織における慢性炎症が主な原因とされ、CCR2, CCR5を代表とするケモカインを介した脂肪マクロファージの脂肪組織への遊走が炎症に寄与する。しかし近年、脂肪炎症に先行して全身代謝の中枢を担う臓器として腸管が注目されている。今回は、小腸ホーミング受容体であるCCR9に着目しT2D病態への関与を明らかにした。C57/BL6j(WT)およびCCR9欠損(CCR9KO)マウスに12週間高脂肪食(HFD)負荷し糖尿病態を惹起したところ、WT/HFDマウスおよびCCR9KO/HFDマウスの両群とも肥満を呈したが、CCR9KO/HFDマウスでは耐糖能およびインスリン抵抗性は有意に良好であった。CCR9およびそのリガンドであるCCL25の発現はHFD負荷の有無によらず小腸で高値であり、HFD負荷による小腸の腸管透過性の亢進はCCR9KO/HFDマウスで有意に改善していた。さらに、CCR9KO/HFDマウス小腸において粘膜固有層へのTh1浸潤及び炎症性サイトカイン産生が有意に抑制されており、腸管バリア機能関連遺伝子発現は亢進していた。HFD負荷に伴う内臓脂肪及び肝臓における炎症もCCR9KOマウスにおいて一様に抑制され、糖代謝関連遺伝子の発現は亢進していた。以上の結果から、CCR9/CCL25 axisは小腸炎症制御を介してT2Dの病態進展に寄与することが示唆された。

  • 筋野 智久, 原田 洋輔, 野村 絵奈, 宮本 健太郎, 久保田 義顕, 金井 隆典
    セッションID: S3-2
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    小腸腸管内においてTh1/Th17細胞の多く存在する小腸粘膜固有層に対し、腸管上皮内においてもT細胞が多く存在する。その中でも腸管上皮内CD4細胞(CD4+Intraepithelial lymphocyte; CD4IEL)はいわゆる粘膜固有層内の細胞とは異なる細胞集団であり、腸内細菌依存的に誘導される免疫抑制系の細胞集団とされる(Sujino T, Science 2016, Barragan LC, Science 2018)が、同細胞の機能、誘導メカニズムは不明である。

    近年、特定の細胞が解糖系Glycolisis、酸化的リン酸化Oxphos、ペントースリン酸回路、β酸化など、細胞特異的にエネルギー消費を利用することが明らかになりつつある。さらにエネルギー代謝を変更することで細胞療法を有効にしようという方法が検討されている。これまでにTregはOxphosを優位に使用しており、Th17細胞はGlycolisisを優位に使用していることが知られている。しかし生体組織内での細胞解析は行われていない。sea-horseを利用し腸管上皮CD4T細胞を脾臓naïve CD4T細胞と比較すると酸素消費量(oxygen consumption rate: OCR)は少なく、プロトン産生量(extracellular acidification rate: ECAR)は増加傾向にあった。以上より腸管上皮内細胞は脾臓細胞と比較し解糖系を消費する細胞集団であることが判明した。ミトコンドリアの膜電位、サイズをmito-trackerを使用し脾臓細胞及びCD4IELを測定した。IELは脾臓naïve CD4 T細胞と比較しミトコンドリア膜電位、サイズ共に小さいことを見出した。以上の結果はIELが解糖系を優位に使用する可能性のある細胞集団であると考えられた。

    次に、CD4IELは菌の存在によりmatureな細胞集団となることより、無菌マウス、SPFマウスにおけるミトコンドリア電位を計測した(CD4IELGF, CD4IELSPF)。CD4IELGFはCD4IELSPFと比較し有意にミトコンドリア膜電位が高い細胞集団が存在することを見出した。CD4IELGF はCD4IELSPF構成における大きな差異はCD4+CD8aa+(DPIEL)細胞の存在であり、DPIELは12週のCD4IELGFの1割程度であるのに対しCD4IELSPFにおいて半数程度存在する。そこでミトコンドリア膜電位、大きさをDPIEL及びその前駆細胞であるCD4+CD8aa-(SPIEL)細胞集団で比較するとDPIELが有意に小さい分画に存在することが明らかとなった。

    次に解糖系を制御する遺伝子群をPCRにて測定した。興味深いことにnaïve CD4T細胞と比較してSPIEL細胞ではmtorc1、hif1aが上昇しているのに対し、DPIEL細胞ではmtorc1は上昇しているがhif1の上昇は軽度であった。そこでDP IEL細胞分化における解糖系遺伝子の関与を検討するため、cd4cre: hif1f/fhif2f/f(DKO)マウスを作成した。DKOマウスにおいてはDPIEL細胞が増加しており解糖系マーカーであるhifがDPIEL分化に重要な役割を果たしていることを見出した。さらにhif1のネガティブレギュレーターであるvhlのノックアウトマウス(cd4cre: vhlf/f)を作成し、DPIEL細胞が逆に減少することを見出した。つまり、腸管上皮細胞は解糖系を優位に使用するが、DPIEL細胞はその中でもhif遺伝子に依存しない細胞集団であることが判明した。

  • 谷川 徹也, 島田 直, 渡辺 俊雄, 灘谷 祐二, 大谷 恒史, 細見 周平, 田中 史生, 鎌田 紀子, 平良 高一, 永見 康明, 藤 ...
    セッションID: S3-3
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】 小麦グルテンの一成分であるグリアジンはセリアック病のみならず、小腸粘膜透過性亢進作用を介して種々の疾患の病態に関与する可能性が示唆されている。今回我々は非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)起因性小腸粘膜傷害におけるグリアジンの病原性を検討した。

    【方法】 グルテンフリー飼料で飼育したマウスを、グリアジン(最大250mg/kg)を経口投与した群(グリアジン群)とvehicle投与群(Ve群)に分け、グリアジンあるいはVe投与後にインドメタシンを経口投与した。粘膜傷害総面積、小腸粘膜への好中球浸潤、TNFα・IL-1β mRNAの発現、粘膜透過性、epidermal growth factor(EGF)受容体シグナルの関与を検討した。

    【結果】 グリアジン群はVe群に比し粘膜傷害総面積および粘膜への好中球浸潤は高度であり、TNFαおよびIL-1βのmRNA発現も高値を示した。グリアジンは粘膜透過性を亢進させた。グリアジンは小腸粘膜におけるEGF受容体のリン酸化レベルを増加させ、EGF受容体チロシンキナーゼ阻害薬(エルロチニブ)はグリアジンによるNSAID起因性小腸傷害の増悪作用を減弱させた。

    【結論】 グリアジンはNSAID起因性小腸粘膜傷害の増悪因子となりうること、その機序としてEGF受容体シグナルを介した小腸粘膜透過性の亢進が関与する可能性が示唆された。

  • 和田 晃典, 東山 正明, 因幡 健一, 杉原 奈央, 塙 芳典, 堀内 和樹, 古橋 廣崇, 岡田 義清, 栗原 千枝, 渋谷 尚希, 八 ...
    セッションID: S3-4
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【背景と目的】 近年、高尿酸血症の研究において尿酸はABCG2トランスポーターを介して腸管へ排泄されることが報告されたが、尿酸はヒト体内の主要な抗酸化物質の一つであり、腸管内で抗酸化物質として働いている可能性が示唆されている。腸管で短鎖脂肪酸等の免疫調節物質を産生する細菌の殆どは偏性嫌気性菌であり、これらの細菌は酸化ストレスに対して脆弱で炎症下では減少することが知られているが、抗酸化物質がこれらの菌に対し防護的に働く可能性が考えられる。今回我々は、高尿酸血症による腸内への尿酸排泄量の変化と腸内細菌叢の関連についてマウスモデルで検討した。

    【方法】 8週齢のC57BL/6Jマウスを用い、イノシン5単リン酸(IMP)1000mg/kgおよびオキソン酸カリウム250mg/kgを1日2回腹腔内投与し、高尿酸血症モデル(IMP負荷群)を作成した。尿酸の血中濃度および腸管内への分泌量はHPLCを用いて測定した。IMP負荷を7日連続で行ったマウスから盲腸便を採取し16S rRNAを用いた次世代シークエンサーで腸内細菌叢を評価した。

    【結果】 尿酸の血中濃度はコントロール群と比較し、IMP負荷群では有意に上昇した。また、腸管への尿酸分泌量もIMP負荷群で有意に増加した。IMP負荷によりα多様性およびβ多様性の変化を認めた。

    【結論】 IMPの非経口投与で高尿酸血症モデルを作成し、血中尿酸値の上昇に伴い腸管への尿酸分泌量は増加することが確認された。それに伴い腸内細菌叢が変化することが示された。

  • 細見 周平, 中田 理恵子, 奥田 博朗, 古瀬 昧澄, 西田 裕, 鋳谷 成弘, 鎌田 紀子, 永見 康明, 谷川 徹也, 渡辺 俊雄, ...
    セッションID: S3-5
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
    会議録・要旨集 フリー

    【目的・方法】 Slco2a1欠損マウスを用いて、Slco2a1の腸管粘膜傷害における役割を明らかにすることを目的とした。Slco2a1の全身性ノックアウトマウス(Slco2a1-/-マウス)とマクロファージ特異的ノックアウトマウス(Slco2a1ΔMPマウス)・腸管上皮特異的ノックアウトマウス(Slco2a1ΔIECマウス)を作出し、腸管における表現型を解析した。3.5%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)水溶液の7日間自由飲水投与でDSS誘発性大腸炎モデルを作成した。大腸粘膜固有層マクロファージ(MΦ)は、CD11bマイクロビーズを用いて単離した。

    【結果】 Slco2a1-/-マウスで自然発症小腸炎・大腸炎は認めなかったが、DSS誘発性大腸炎はSlco2a1-/-マウスでは増悪した。DSS投与Slco2a1-/-マウスにおいて、腸管組織のマイクロアレイ解析でTnfIl1bなどの炎症性サイトカインや、Ccl2Ccl4などのマクロファージの遊走や活性化に関与するケモカインの遺伝子発現が、Western blotでmature IL-1βとCaspase-1発現の亢進も認めた。大腸粘膜固有層MΦのmRNA発現解析でもDSS投与Slco2a1-/-マウスでIl1bが高値であった。また、Slco2a1ΔIECマウスではDSS誘発性大腸炎の増悪は認めなかったが、Slco2a1ΔMPマウスではSlco2a1-/-マウス同様にDSS誘発性大腸炎の増悪を認めた。Slco2a1-/-マウスで認めたDSS誘発性大腸炎は、インフラマソーム阻害剤投与によって軽減した。

    【結論】 マクロファージのSlco2a1は腸管恒常性維持に重要な因子であることが明らかとなり、その機序として、腸管マクロファージにおけるインフラマソームの活性化が関与している可能性が示唆された。

  • 福嶋 真弥, 塩谷 昭子, 半田 有紀子, 松本 啓志, 井上 亮, 内藤 裕二
    セッションID: S3-6
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【背景】 消化管内細菌叢は、管腔内だけでなく消化管粘膜上皮・粘液層にも存在する。腸内細菌研究の多くが糞便を用いた研究であるが粘膜関連細菌叢(MAM)を検討した臨床研究は少ない。

    【目的】 クローン病(CD)の腸内細菌叢の多様性と特徴および、腸内細菌叢が炎症性サイトカインに与える影響を検討することを目的に、MAMと血清サイトカイン値の相関を検討した。

    【方法】 2リットルのポリエチレングリコールを用いた前処置を行い、大腸内視鏡検査を行った。内視鏡下にブラシを用いて回腸、S状結腸粘膜の粘液を採取した。各サンプルからDNAを回収し、MiSeqによる16Sリボゾーム遺伝子のV3-V4アンプリコンシークエンス解析を実施した。QIIMEを用いて微生物の属レベルまでの同定を行い、細菌構成比、多様性について検討した。さらにメタゲノム機能予測解析(PICRUSt)を追加した。血清サイトカイン値はMilliplex MAP Human Cytokine/Chemokine Magnetic Bead Panel Immunoassayを用いて測定した。

    【結果】 対象はクローン病患者15名(平均年齢43.2歳、男性:女性 = 10:5)、健常者13名(平均年齢57.9歳、男性:女性 = 7:6)であった。CDは健常群と比べα多様性が減少しており、unweighted PCoA解析において2群間で有意差を認めた。CDではBifidobacterium属、Ruminococcus属が多く、Roseburia属、Oscillospira属が少なかった。CDで増加していたBifidobacterium属はIL-15と正の相関を認めた。

    【結論】 CDでは健常者と腸内細菌叢が異なり、特定の細菌が粘膜免疫を制御している可能性が示唆された。

  • 日比谷 秀爾, 白崎 友彬, 勝倉 暢洋, 渡邊 翔, 岡本 隆一, 土屋 輝一郎, 渡邊 守
    セッションID: S3-7
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【背景】 炎症性腸疾患において炎症暴露による腸管上皮細胞の形質転換機構は不明である。ヒト腸管オルガノイドを用いて体外慢性炎症モデルを確立することを目的とした。

    【方法】 ヒト小腸上皮細胞を内視鏡検体から単離し小腸オルガノイドを樹立した。炎症関連受容体の発現をPCRで解析し、発現受容体に対応するリガンドを小腸オルガノイドに添加し12週間培養を継続した。NF-kB標的遺伝子IL-8、DUOXA2の発現をPCRで評価した。大腸オルガノイドについても同様の解析を行った。

    【結果】 3時間の炎症刺激でIL-8の上昇を認めたが1週間後に発現は減少した。活性酸素産生に関連するDUOXA2の発現は、3時間刺激後より発現上昇を認め、12週まで発現持続した。マイクロアレイ解析で最も発現上昇した遺伝子はCLDN18で、潰瘍性大腸炎において増加することが報告されておりIBDを模倣していることが示唆された。CLDN18は、経時的に発現増幅を認めた。これらの結果は小腸・大腸オルガノイドで同様だった。3パターンの遺伝子発現変化(IL-8、DUOXA2、CLDN18)が同定され、in vitro慢性炎症モデルの構築が小腸・大腸両方で可能と考えらえた。

    【考察】 オルガノイドを用いたIBD体外疾患モデルの確立は、慢性炎症特異的遺伝子同定に有用である。小腸・大腸の差異を解析することでIBDの病態解明に有用と考えられる。

主題セッション4 薬剤起因性小腸傷害の現況と対策
  • 半田 有紀子, 福嶋 真弥, 合田 杏佑, 勝又 諒, 葉 祥元, 大澤 元保, 村尾 高久, 半田 修, 松本 啓志, 梅垣 英次, 塩谷 ...
    セッションID: S4-1
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【目的】 これまでに低用量腸溶剤アスピリン(LDA)による消化性潰瘍および上部消化管出血と関連する臨床背景因子および遺伝子多型の検討を行ってきた。さらに薬物代謝・トランスポーター遺伝子解析用マイクロアレイ(DMET plus)を使用し、網羅的SNP解析により同定したCYP4F11(rs1060463)の関連性を報告した(PLoS One. 2013 18;8:e84244)。今回LDA内服患者における小腸出血関連因子について、症例を追加し検討した。

    【対象および方法】 カプセル内視鏡検査を行い小腸粘膜傷害による小腸出血が疑われた長期LDA内服患者を小腸粘膜傷害群とし、長期LDA内服患者で消化管出血歴がなく、内視鏡検査で消化性潰瘍を認めない患者を対照群とした。臨床背景因子との関連性について検討し、さらに網羅的SNP解析により有意な関連性が得られたSNPsについてTaqMan SNP Genotyping Assayあるいはダイレクトシークエンス法により検討した。

    【成績】 対象は小腸粘膜傷害群44例と対照群427例。小腸粘膜傷害と有意な関連性が認められたのは、喫煙、脳血管疾患、NSAIDsあるいはワルファリン併用、CYP4F11 20043G > A(D446N)rs1060463、CYP24A1 18948C > T rs4809957であった。多変量解析の結果、喫煙、脳血管疾患、ワルファリン併用とともにはCYP24A1 18948C > T rs4809957が有意に関連した。PPIとの関連性は認めなかった。

    【結論】喫煙が最も有意なLDA起因性小腸粘膜傷害の危険因子であり、CYP24A1 SNPは小腸出血の予測マーカーとなる可能性が示唆された。

  • 平田 有基, 上田 康裕, 柿本 一城, 竹内 利寿, 樋口 和秀
    セッションID: S4-2
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【背景】 血栓・塞栓症の予防のために、低容量アスピリン(LDA)を内服している患者数は増加しつつある。一般的にプロトンポンプ阻害剤(PPI)は上部消化管の粘膜傷害を予防する一方で、腸内細菌叢の変化を通じて小腸の粘膜傷害は増悪させるという報告もある。そこで我々は、LDA長期内服患者にPPIを投与すると腸内細菌叢がどのように経時的に変化していくのかと、PPI投与により粘膜傷害が起こるのであれば、臨床的に問題となるような貧血が起こるのかを調べることとした。

    【方法】 H2ブロッカーやPPIの投与をされていないLDA長期内服32症例をエソメプラゾール(20mg/day投与群)とボノプラザン投与群(10mg/day)に振り分け腸内細菌叢の変化をday0、30、90、180に解析した。また、同じ時点でHb、Ht値ならびにガストリンの血中濃度の測定を行った。

    【結果・結語】 LDA長期内服群にPPIを投与することで、腸内細菌叢はLactobacillales orderの割合がday30の時点で有意に増加しており、この変化はday180まで継続していた。またこの傾向は、ボノプラザン投与群の方がエソメプラゾール投与群と比較して強かった。Lactobacillales orderの割合はガストリンの血中濃度と正の相関関係を示しておりこれは、胃酸分泌抑制が強くかかることにより、腸内環境が変化しLactobacilllales orderにとって有利な環境になっている可能性が示唆された。また、腸内細菌叢が大きく変化している一方で、貧血の進行等は認めず、粘膜傷害が起こっていたとしても臨床的に問題となるほどではない可能性がある。

  • 吉原 努, 及川 洋祐, 田中 良紀, 加藤 孝征, 結束 貴臣, 三澤 昇, 芦苅 圭一, 冬木 晶子, 大久保 秀則, 日暮 琢磨, 中 ...
    セッションID: S4-3
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【目的】 プロトンポンプ阻害薬(PPI)はアスピリン(ASA)による上部消化管粘膜障害予防のため併用されることが多く、ASAによる小腸粘膜障害を増悪させる可能性が指摘されている。ASAによる小腸粘膜障害はマウスで形成するのは難しいとされていたが、高果糖食を摂取させることで安定して形成させることに成功した。このモデルを用いてPPIによる小腸粘膜障害増悪を評価し、Probioticsの1つであるBifidobacterium bifidum G9-1(G9-1)を投与し、治療の効果を検討した。

    【方法】 6週齢のマウスに高果糖食を9週間摂取させた。PPI投与群には毎日オメプラゾールを20mg/kg腹腔内投与した。ASAは解剖3時間前に200mg/kg経口投与した。G9-1は解剖1週間前より連日経口投与した。

    【結果】 ASAに加えてPPI投与を行うと、ASA単独投与よりも粘膜障害が増悪し、G9-1投与により粘膜障害は緩和した。腸内細菌解析では、PPIを投与すると空腸のAkkermansia属の占有率が増加した。空腸のムチン層はASAとPPI投与により菲薄化し、G9-1投与により改善した。G9-1投与により血清中のIL-6は減少し、空腸のIL-10、TGF-β、Foxp3遺伝子発現は上昇した。フローサイトメトリーによるlamina propria lymphocyte解析では、G9-1投与によりCD25+Foxp3+リンパ球が増加した。

    【考察】 Akkermansia muciniphilaはムチン分解菌として知られており、PPIにより腸内環境が変化し、空腸で増加し、ムチン層を菲薄化することで粘膜障害を増悪させた可能性がある。G9-1は、これらの変化を抑制するとともに、CD25+Foxp3+制御性T細胞誘導により抗炎症作用を発揮し、粘膜障害を改善した可能性がある。

  • 平賀 寛人, 櫻庭 裕丈, 有明 千鶴, 前田 高人, 村井 康久, 渡邊 里奈, 立田 哲也, 蓮井 桂介, 菊池 英純, 澤谷 学, 平 ...
    セッションID: S4-4
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【背景・目的】 2014年に保険収載された大腸カプセル内視鏡(以下CCE)は患者受容性の向上、生理的状態での観察等の点で期待が大きい。AFR機能を活用した全腸観察による付加価値を検討するため、「Total Observation from intestine To Anal Lesion:TOTAL study(UMIN ID:000027621)」を立案した。今回我々は、TOTAL study症例で非ステロイド系消炎鎮痛薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)起因性腸病変を後方視的に評価することで、CCEによる全腸観察の有用性を示すことを目的とした。

    【方法】 対象は大腸疾患が確定または疑われ、本研究に同意が得られた被験者(16歳以上80歳未満)とし、前処置はモビプレップ・ひまし油レジメンを採用した。

    【結果】 2019年1月現在、登録症例数109例、対象は潰瘍性大腸炎40例、ベーチェット病30例、スクリーニング23例、その他16例で全大腸観察率:104/109例(95.4%)、平均全腸通過時間:204分であった。NSAIDs内服症例は12/109例(11.0%)でいずれも無症状、うち4/12例(33.3%)にNSAIDs起因性小腸病変(全例下部回腸の発赤・アフタ性病変)を認めたが、大腸病変の併存は認めなかった。

    【結語】 CEによる全腸観察を利用したNSAIDs起因性腸病変の評価は、安全性・忍容性・精度に加えて小腸・大腸病変の一括観察という付加価値もあり、非常に有用と考えられた。高齢化社会が進む我が国におけるNSAIDsの需要は増加の一途をたどっており、大腸がん検診等でCCEによる全腸観察を採用することで、無症状のNSAIDs起因性腸病変に対する早期治療介入が可能と考えられ、今後の更なる発展が期待される。

  • 三原 弘, 中山 優吏佳, 藤浪 斗, 高嶋 斗, 高嶋 祐介, 南條 宗八, 安田 一朗
    セッションID: S4-5
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【背景と目的】 原因不明の消化管出血(OGIB)は、可視的出血の有無に基づき、顕在性と潜在性に大別される。カプセル内視鏡(CE)は、OGIBによる小腸病変の診断に有効で、75%が小腸出血とされるが、小腸精査がなされない場合もある。非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、低用量アスピリンおよび抗凝固薬は、上部消化管出血(UGIB)を増加させ、プロトンポンプ阻害薬(PPI)で予防しうるが、PPIは小腸出血のリスクを高める可能性が示唆される。本研究は、薬剤使用(抗血栓薬、NSAIDおよびPPI)とOGIB型(顕在性または潜在性)との関係を明らかにすることを目的とした。

    【対象と方法】 2010年5月から2018年12月の間に、富山大学附属病院でCEが実施された外来および入院中のOGIB患者の抗血栓薬(抗血小板薬単剤・併用(DAPT)、ワルファリン、DOAC)、NSAIDおよびPPIの内服情報を後方視的に解析した。OGIB型の予測因子をFisher正確検定でオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)により算出した。

    【結果】 190人の患者(男性113人、女性77人、平均年齢68歳)が選択基準を満たした。顕在性と有意に関連した因子は抗凝固薬と抗血小板薬の併用のみであった(OR = 8.17; 95% CI = 1.01―66.03; P = 0.0248)。一方、抗血栓薬単剤、DAPT、NSAIDおよびPPIは関連していなかった。

    【結論】 抗凝固薬と抗血小板薬の併用が顕在性と関連していた。それ以外は、顕在性を増加させず、潜在性OGIBに対しても積極的な小腸評価が必要であると考えられた。

  • 中田 晃暢, 灘谷 祐二, 小阪 聡, 松本 侑士, 大谷 恒史, 谷川 徹也, 渡辺 俊雄, 藤原 靖弘
    セッションID: S4-6
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【背景】 NLRP3 inflammasomeはNLRP3およびpro-Caspase-1、ASCから構成され、cleaved Caspase-1を介してpro-IL-1β・IL-18を活性型であるmature IL-1β・IL-18に変換することで炎症を惹起する。5-FUは炎症性サイトカイン上昇を伴う小腸粘膜傷害を惹起することが知られているが、NLRP3 inflammasomeの5-FU起因性小腸粘膜傷害における役割は現在明らかではない。

    【目的】 5-FU起因性小腸粘膜傷害におけるNLRP3 inflammasomeの役割を明らかにする。

    【方法】 小腸粘膜傷害は雄性Wild Type(WT)、Caspase-1-/-、NLRP3-/-マウスに5-FUを腹腔内投与(500mg/kg)することによって惹起した。同WTモデルマウスにrecombinant IL-1βまたはIL-18(0.1μgまたは1μg/kg/日)を腹腔内投与した。抗IL-1β中和抗体(100μg/匹/日)を投与した。Caspase-1阻害薬(Ac-YVAD-CMK; 1mgまたは10mg/kg/日)を投与した。マウス各群の体重変化・下痢の程度や、小腸組織の組織学的検討、炎症及びNLRP3 inflammasome関連分子の発現解析を行った。

    【結果】 組織学的検討では、5-FU投与後3日目を最大として絨毛高が低下し、強い炎症性変化を認めた。それはKCとTNF-αのmRNA発現量の増加を伴った。5-FU投与後3日目に、mature-IL-1β、cleaved Caspase-1、並びにNLRP3の蛋白質発現量の増加を認めた。しかし、5-FU投与後3日目にmature IL-18の増加は認めなかった。Recombinant IL-1β投与群で小腸粘膜傷害は増悪したが、中和抗体投与群では粘膜傷害は改善した。一方、recombinant IL-18投与群では粘膜傷害の程度に有意な変化は無かった。Ac-YVAD-cmk投与群、Caspase-1-/-とNLRP3-/-マウス群では小腸粘膜傷害は軽減した。5-FU投与はmature IL-1βとNLRP3 inflammasome関連分子の発現を増加させ、小腸粘膜傷害を惹起した。そして、IL-1βの投与は小腸粘膜傷害を増悪させ、IL-1β、Caspase-1、並びNLRP3の阻害は小腸粘膜傷害を抑制した。

    【結語】 5-FU起因性小腸粘膜傷害はNLRP3 inflammasomeによるIL-1βの活性化により誘導されることが明らかになった。

  • 菊池 英純, 櫻庭 裕丈, 明本 由衣, 浅利 享, 蓮井 桂介, 立田 哲也, 平賀 寛人, 澤谷 学, 珍田 大輔, 三上 達也, 福田 ...
    セッションID: S4-7
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【背景】 免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は、適応癌腫の拡大によって投与例が増加している。ICIは難治例でも高い治療効果が認められる一方で、免疫関連有害事象(irAEs)が問題となっている。特に消化管のirAEsは皮膚病変についで頻度が高く、消化器内科医が遭遇する機会も増えている。

    【目的】 当院にて経験したICI投与後に発症した小腸炎3例を提示し、irAE小腸炎の内視鏡像および病理像を検討する。

    【結果】 症例1は73歳女性で悪性黒色腫に対しNivolumab + Ipilimumabを投与し2か月後に食道・胃・小腸炎(空腸、回腸)を発症した。症例2は62歳女性で悪性黒色腫に対しNivolumabからIpilimumabに薬剤変更した2か月後に小腸炎(回腸)を発症した。症例3は71歳男性で悪性黒色腫に対しNivolumab + Ipilimumabを投与した1か月後に小腸炎(回腸)を発症した。3例とも内視鏡にて小腸粘膜が白濁し柔毛の平坦化を認めた。病理組織では軽度好中球浸潤を認めるが特異的所見はなく、上皮にアポトーシスは認めなかった。全例でステロイドによる加療で症状の改善をみとめ、現在も生存中である。

    【結語】 irAEは小腸にも発症するため、ICI投与後の下痢では小腸の観察も重要である。小腸炎では粘膜がびまん性に白濁し病理学的にアポトーシスは認めないことから、大腸炎と炎症像が異なる可能性がある。

  • 梁井 俊一, 川崎 啓祐, 中村 昌太郎, 石田 和之, 菅井 有, 松本 主之
    セッションID: S4-8
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【目的】 免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor:ICI)であるニボルマブやイピリムマブの使用の際には免疫関連有害事象(immune-related adverse effect:irAE)に注意が必要である。最近、irAEの大腸炎の報告例は集積されているが、小腸病変については不明な点が多い。そこで、ICIによる小腸障害について明らかにすることを目的とした。

    【方法】 2015年12月から2019年2月までにICIを使用した患者のうち、irAEの大腸炎と診断した8例(男性5例、女性3例:平均年齢60歳)を対象とし、小腸病変の有無について遡及的に検討を行った。

    【成績】 基礎疾患の内訳は悪性黒色腫4例、非小細胞肺癌1例、腎細胞癌3例であった。8例中1例は悪性腫瘍に先行した潰瘍性大腸炎の治療中であった。全例で下痢を認め、4例で血便を認めた。大腸炎を発症した際に施行した腹部CTで小腸壁肥厚の認められた症例は8例中4例であった。カプセル内視鏡は1例で施行され、全小腸にびらんを認めた。大腸内視鏡検査で終末回腸を観察できた症例は8例中5例で、そのうち3例で粘膜病変を認めた。3例の内訳は顆粒状粘膜1例、びらん2例であった。病理学的には3例中2例でアポトーシスが認められた。

    【結論】 ICIの使用で小腸にも粘膜傷害が生じる。

主題セッション5 小腸内細菌異常増殖(SIBO)における診断と治療の標準化を目指して
  • 横山 邦彦, 川田 雄三, 坂牧 僚, 高村 昌昭, 横山 純二, 寺井 崇二
    セッションID: S5-1
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【背景】 近年、小腸内細菌異常増殖(SIBO)と様々な疾患とのかかわりが指摘され注目されている。その診断法として腸吸引液の定量培養、あるいは水素・メタン呼気試験が有用とされているが、一定の見解は得られていない。

    【目的】 当院では2018年度から水素・メタン呼気分析装置(Breath Gas Analyzer BGA-2000D:呼気生化学栄養代謝研究所)をSIBOの診断として用いている。診断・診療の現状と問題点につき考察を行った。

    【結果】 これまでに健常者20人、患者20人に対し呼気試験を行ってきた。偽陽性を避けるため、呼気試験検査前の食品制限や、禁食時間の設定、検査当日の口腔内洗浄などの工夫が必要であった。摂取する糖質は患者への負担を考えグルコース50gを使用しており、糖尿病患者のみラクツロース10gを用いているが、ほぼ問題なく施行できている。

    【考察】 呼気試験は食事内容の影響を受けやすく、前処置や診断基準について一定の見解がないことが問題である。基礎疾患のない健常者において適切な前処置を行った場合でも糖質負荷前の呼気中水素濃度が高いことがある。そのため診断基準には負荷前の基礎値と負荷後のpeak値の差を用いることが有用と考えられる。当院では負荷前後で呼気中水素濃度が20ppm以上上昇した場合を陽性としているが、診断基準作成のためにはさらに症例の蓄積が必要である。

  • 小山 恵司, 尾﨑 隼人, 吉田 大, 堀口 徳之, 大森 崇史, 城代 康貴, 前田 晃平, 小村 成臣, 大久保 正明, 鎌野 俊彰, ...
    セッションID: S5-2
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【目的】 ブドウ糖負荷終末呼気水素・メタン分析を用いた当院におけるSIBOの診断、治療経過を遡及的に検討した。

    【方法】 対象はSIBOが疑われた7例(クローン病3例、慢性偽性腸閉塞症3例、難治性過敏性腸症候群1例、年齢13歳-68歳;中央値42歳、男性4例:女性3例)。75gブドウ糖内服前、後5、10、20、30、40、50、60、75、90分後に終末呼気を採取し、水素・メタンガス濃度を解析した。SIBOの定義は10ppm以上または基準値から12ppm以上の上昇とした。

    【結果】 4例(57%)が以下のようにSIBOと診断された。

    症例①(13歳男性)主訴:下痢、小腸大腸クローン病にて他院より糞便移植(FMT)目的で紹介、75gブドウ糖内服5分後に水素濃度19ppm(Δ16ppm)、FMT施行後より病状改善・安定。

    症例②(60歳性)主訴:下痢・浮腫・食思不振・腹部膨満にて紹介、75gブドウ糖内服40分後に水素濃度20ppm(Δ17ppm)、特発性慢性偽性腸閉塞によるSIBO、Leaky gut症候群、吸収不良症候群と診断、リフキシマ内服にて改善、現在は下剤にて症状コントロール。

    症例③(45歳男性)主訴:下痢、小腸大腸クローン病にて他院よりFMT目的に紹介、75gブドウ糖内服90分後に水素濃度53ppm(Δ49ppm)、FMT含め治療により便回数・便形状ともに若干改善。

    症例④(42歳男性)主訴:下痢・腹痛、小腸大腸クローン病にて他院よりFMT目的に紹介、75gブドウ糖内服30分後・50分後に水素濃度26ppm(Δ9ppm)、FMT施行も効果なし。

    【考察】 クローン病や慢性偽性腸閉塞などSIBOの原疾患は多彩であり、またその治療法は確立していない。今後、症例を積み重ね、病態の詳細な検討が必要と考える。

  • 飯尾 澄夫, 岡 志郎, 壷井 章克, 大谷 一郎, 田中 信治, 茶山 一彰
    セッションID: S5-3
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【背景】 SIBOは小腸の器質的変化・運動の変化などにより腸管内容物のうっ滞が助長され、細菌が正常より過剰に増殖し様々な腹部症状をきたす疾患とされるが、明確な診断基準はない。

    【目的】 当科のSIBO疑診例からその臨床的特徴と治療法について検討する。

    【対象と評価項目】 当科で2016年7月から2019年5月に臨床所見からSIBOが疑われた5例(男性2例、平均年齢63歳)を対象とし、臨床症状、背景疾患、CT検査所見、内視鏡所見、治療法、臨床経過を評価した。バルーン内視鏡で吸引採取した腸液培養にて細菌数が105cfu/ml以上認めた場合にSIBOと診断した。

    【結果】 臨床症状は、慢性下痢3例、腹部膨満感・腹痛2例、背景疾患は全身性強皮症3例、クローン病1例、肝硬変1例であった。CT検査では全例に小腸拡張(うち3例に壁肥厚)を認めた。内視鏡所見は、腸液が全例で混濁し、絨毛萎縮3例、びらん/潰瘍2例を認めた。腸液培養にて全身性強皮症患者の2例で細菌数105cfu/ml以上であった。クローン病の1例はSIBOの診断基準は満たさなかったが腸液培養でE.coliが104cfu/mlであった。SIBO確診例に対して経口抗菌薬(シプロフロキサシン、スルバクタム・アンピシリン)投与で症状は改善したが、再燃を1例(全身性強皮症)に認めた。

  • 藤原 靖弘, 谷川 徹也, 渡邉 俊雄
    セッションID: S5-4
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【背景】 プロトンポンプ阻害薬(PPI)は広く臨床に用いられている。一方、近年PPIと様々な疾患発症との関連が報告されている。PPI長期内服とSIBOとの関連については議論の多いところである。

    【目的】 当科でSIBO診断目的にて水素呼気試験を行った症例における内服薬との関連を調査した。

    【方法】 2010年から2013年に水素呼気試験を行った120例中、ラクツロース水素呼気試験(LHBT)を施行した94例(PPI内服50例、H2RA内服14例、非内服コントロール30例)を対象とした。LHBT陽性の定義は様々な基準(1. 水素上昇 ≥ 10ppm/90min 2. 水素上昇 ≥ 10ppm/180min 3. 水素上昇 ≥20ppm/90min 4. 水素上昇 ≥ 20ppm/180min 5. 水素上昇ダブルピーク 6. メタン上昇 ≥ 15ppm/180min)により判定した。一部のSIBO症例はLactobacillus casei投与後にもLHBTを行った。

    【結果】 LHBT陽性率は3群間で有意差はなく、多変量解析においてもPPI内服は有意なリスクではなかった。食後膨満感がPPI内服群で46%と高かったが、LHBT陽性とは関連を認めなかった。Probiotics投与した9例中4例(44%)はLHBT陰性化となり、呼気水素ピーク値も有意に低下した。

    【結語】 LHBTを用いた検討ではPPI長期内服とSIBOとの明らかな関連は認めなかった。

  • 上野 貴, 坂本 博次, 矢野 智則, 櫻井 祐輔, 関谷 万理子, 宮原 晶子, 小林 泰俊, Tsevelnorov Khurelbaa ...
    セッションID: S5-5
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【目的】 盲係蹄症候群は広義では腸管手術後などにより形成された盲端やblind loop内で腸内容の停滞のため細菌の異常増殖を起こし発症する。バルーン内視鏡により直接その存在を確認して診断できるが、長期経過を検討した報告は少ない。当院における盲係蹄症候群の長期経過を明らかにすることを目的に検討を行った。

    【方法】 当院にて2001年7月~2018年12月の間にダブルバルーン内視鏡にて診断した盲係蹄症候群26例のうち、6か月以上の経過が確認できた20例(男性13例、診断時年齢中央値62歳、観察期間中央値81.5月)を対象に、診断契機、成因、抗菌薬投与の有無とその効果、その他の治療、手術例について後ろ向きに検討した。

    【結果】 診断契機は血便10例、低蛋白血症5例、慢性貧血4例、腹部膨満感1例であった。成因は狭義のBlind loop 10例、self-filling typeのBlind pouch5例、輸入脚5例であった。抗菌薬投与は15例に施行され、うち14例が一時的には効果を認めた。その他の治療として、Blind loop内に生じた狭窄に対する内視鏡的バルーン拡張術、Over the scope clip(OTSC)による閉鎖術が各1例に行われ、いずれも有効であった。手術は8例に施行され4例は治療抵抗性の出血のため、3例は治療抵抗性の低蛋白血症のため、1例は遷延する食欲不振のためであった。いずれも術後は盲係蹄症候群に起因する症状は消失改善した。

    【結論】 盲係蹄症候群の根治には外科的治療が必要だが、抗菌薬等の保存的加療により長期的に経過観察が可能な場合もある。

一般演題1
  • 谷口 正浩, 鈴木 一也
    セッションID: O1-1
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【背景】 当院では、上下部内視鏡検査を施行しても原因が明らかではない消化管出血(OGIB)や消化管閉塞の原因を検索するために、カプセル内視鏡(CE)やバルーン内視鏡(BAE)を用いた診断・治療を試みている。そこで小腸腫瘍に対するBAEの検査成績について後方視的に検討した。

    【方法】 2010年5月から2019年6月までにBAEを施行した83症例127件のうち、小腸腫瘍を認めた症例を対象として検討を行った。

    【成績】 小腸腫瘍は83症例中21例(25.3%、男性14例、女性5例、平均年齢72.5歳)に認めた。内訳は悪性リンパ腫7例、GIST4例、小腸ポリープ1例、小腸癌5例、転移性小腸腫瘍1例、その他3例であった。検査契機はOGIB14例、画像検査異常5例、イレウス1例、不明熱1例であった。BAE施行前にCEを施行した5例全例において小腸の異常所見が指摘され、CEの滞留は認めなかった。悪性リンパ腫、GIST、小腸癌、転移性小腸腫瘍の17例中13例(76.4%)で生検での確定診断が得られ、診断目的の手術を回避することができた。また手術への移行症例は14例で、十二指腸の腫瘍を除いた全例で術前マーキングが可能であった。

    【まとめ】 実地臨床ではCE等の各種モダリティも併用することで、BAEは小腸腫瘍の診断・治療に有用であった。当院における診断・治療ストラテジーや動画症例を提示し報告する。

  • 橋本 悠, 山本 安則, 北畑 翔吾, 白石 佳奈, 花山 雅一, 丹下 和洋, 小西 佳奈子, 川村 智恵, 八木 専, 竹下 英次, 池 ...
    セッションID: O1-2
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【目的】 転移性小腸腫瘍は、稀な疾患であり剖検例での報告が中心であった。今回、当科で施行したダブルバルーン内視鏡(Double Balloon Endoscopy; DBE)にて診断しえた転移性小腸腫瘍の臨床的特徴を明らかにする。

    【対象と方法】 2004年3月から2019年6月までに当科でDBEを施行した285症例(のべ436症例)を対象とし、臨床的事項を解析した。

    【結果】 小腸腫瘍は、39例(転移性小腸腫瘍6例、原発性小腸癌8例、悪性リンパ腫17例、GIST 7例、カルチノイド1例)認めた。転移性小腸腫瘍は、平均年齢73歳(66-77歳)、男性4例、女性2例、原発巣は、肺癌2例(共に大細胞癌)、乳癌、腎癌、腹膜癌、S状結腸癌が各1例ずつであった。DBEの検査契機となった主訴は、下血が3例と最も多く、他イレウス2例、腹痛1例であった。腫瘍の局在は、6例中5例(83.3%)が空腸であった。腫瘍の肉眼所見は、発赤または潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様隆起が3例、他、壁外性圧排狭窄、潰瘍性病変、腫瘤状隆起が各1例ずつであった。小腸転移に対する治療は、外科切除3例、化学療法2例、保存的加療が1例に行われた。予後は、長期生存1例を除き平均生存期間6.6か月(1-13か月)と不良であった。

    【結論】 転移性小腸腫瘍は、主に空腸にみられ、肉眼型は粘膜下腫瘍様隆起をとることが多く、DBEがその発見および質的診断にも有用であった。今後、化学療法の進歩などによる担癌患者の長期生存例が増加することにより、転移性小腸腫瘍の増加が予想され、それを念頭に置いた小腸診療が必要である。

  • 門馬 絵理, 辰口 篤志, 星本 相理, 橋野 史彦, 梅田 隆満, 片岡 宏章, 高木 信介, 西本 崇良, 大森 順, 秋元 直彦, 三 ...
    セッションID: O1-3
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【背景】 原発性小腸腺癌は希少で、その臨床病理学的特徴も十分に解明されていない。発癌過程も不明であるが、小腸癌は、Lynch関連癌であることから、DNAミスマッチ欠損(dMMR)を、MLH1、MSH2、MSH6、PMS2の免疫染色を施行して解析した。当院で経験した小腸癌41例を対象とした。局在:十二指腸14例、空腸25例、回腸4例。stage 0/Ⅰ9例、stageⅡA/B 13例、stageⅢA/B 6例、stageⅣ13例。

    【結果】 小腸癌全体の5年生存率は61%であったが、stage 0-ⅢBの28人では86%であった。Overall survivalと相関がみられたのは、単変量解析では、CEA高値、CA19-9高値、リンパ節転移、他臓器転移、腹膜播種であった。7例にdMMRが認められた(17%)。MLH1/PMS2欠損が5例、MSH2/MSH6欠損が2例であった。その臨床病理学的特徴は、平均58歳。分化型6例、低分化型1例。stageⅡ5例、stageⅢ1例、stageⅣ1例。予後良好で全例生存している(平均観察期間63か月)。

    【結語】 小腸癌は、発見時約3分の1の症例がstageⅣで、そのため予後不良と見られがちであるが、stageⅢまでに見つかればそれほど悪くはない。dMMR症例では有意に予後良好であり、全体の17%と比較的高率であることが原因の一つと考えられる。

  • 星本 相理, 辰口 篤志, 橋野 史彦, 梅田 隆満, 片岡 宏章, 高木 信介, 西本 崇良, 大森 順, 秋元 直彦, 三井 啓吾, 米 ...
    セッションID: O1-4
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    原発性小腸腺癌は希少であるため、十分な臨床病理学的解析がなされていない。Programmed cell death 1(PD-1)は、固形癌において免疫チェックポイント阻害剤の標的分子である。今回われわれは小腸腺癌におけるprogrammed cell death ligand 1(PD-L1)、PD-L1の発現を調べ、MMRを含めた臨床病理学的因子との相関関係を検討した。

    【方法】 小腸腺癌41例に対して、PD-1/PD-L1の発現は、免疫染色を施行した。PD-L1の評価法は、1%以上陽性細胞に膜様に染色された場合陽性とした。dMMRは、MLH1、MSH2、MSH6、PMS2の免疫染色を施行した。

    【結果】 PD-L1[T]は、38例中6例(16%)で陽性であった。PD-L1[ I ]は、38例中15例(39%)で陽性であった。PD-L1[T]は、低分化腺癌に高率で、粘液腺癌では全て陰性であった。リンパ節転移や病期との相関は認められなかった。PD-L1[ I ]は、リンパ節転移陰性で高率であった。7例dMMRのうち、PD-L1[T]は4例陽性で統計学的に有意な相関関係が認められた。PD-L1[T]はMMR欠損と統計学的に有意な関係が認められた。

    【結論】 ただPD-L1陽性1、あるいはdMMRの症例は予後が比較的良好なことから、免疫チェック阻害剤の対象となる小腸癌は限定的であることが示唆された。

  • 天野 孝広, 田代 拓, 大竹 由利子, 谷 瑞季, 良原 丈夫, 岩谷 修子, 辻井 芳樹, 井上 隆弘, 林 義人, 新崎 信一郎, 飯 ...
    セッションID: O1-5
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【背景】 小腸癌は全消化管悪性腫瘍の0.6~3.2%と非常に稀であり、そのうち約30%が腺癌(Small Bowel Adenocarcinoma;SBA)とされている。そのため、切除不能SBAに対する化学療法や分子標的治療薬の有用性に関する報告は少なく、未だ限定的である。

    【方法】 2000年~2017年に大阪大学関連病院13施設においてSBAと診断し、化学療法(5-FU+Oxaliplatin)を施行した16歳以上の患者を対象とし、後視方的に検討を行なった。

    【結果】 乳頭部癌を除く十二指腸癌16例・空腸癌21例・回腸癌8例の全45症例(うち男性26例、診断時の年齢中央値68歳, PS 0:32例、StageⅣ ; 33例)が登録された。化学療法のレジメンはmFOLFOX6;21例、CAPOX;21例、SOX;3例であった。全45症例中16例で分子標的治療薬(BevacizumabもしくはCetuximab)を追加していた。Overall survival(OS)に及ぼす因子に関してCox比例ハザードモデルにて検討を行うと単変量解析にて分子標的治療薬を追加することのみが有意な因子(Hazard Ratio;0.37、95%Confidence Interval;0.15-0.83)として抽出された。

    【結語】 切除不能原発性小腸癌に対する化学療法として5-FU + Oxaliplatinのレジメンに分子標的治療薬を加えることがOSに寄与する可能性が示唆された。

一般演題2
  • 大谷 一郎, 岡 志郎, 田中 信治, 飯尾 澄夫, 壷井 章克, 相方 浩, 茶山 一彰
    セッションID: O2-1
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    近年、肝硬変患者の門脈圧亢進に伴う消化管病変として、門脈圧亢進症性小腸症(PHE)が注目されている。今回、食道静脈瘤に対する内視鏡的静脈瘤硬化療法(EIS)後にPHE増悪を認めた1例を経験したので報告する。症例は67歳男性、1991年にC型慢性肝炎、肝硬変に対してインターフェロン治療を受け、SVRを達成した。2009年1月に肝細胞癌に対して肝動脈化学塞栓療法およびS5/6部分切除、2014年3月に肝細胞癌再発に対して残肝後区域切除を施行後、当科に通院中であった。2015年1月の上部消化管内視鏡検査にて食道静脈瘤(LsF2CbRC+)を指摘され、EISを計3セッション施行した。同年12月の腹部CT検査にて、食道静脈瘤への流入血管である左胃静脈の消退と、術前のCT検査では認めなかった側副血行路(脾腎シャント)の発達を認めた。また、初回EIS前(2014年7月)に施行したカプセル内視鏡検査ではPHEの所見を認めなかったが、EIS後(2016年12月)に施行したカプセル内視鏡検査では小腸全域に及ぶ絨毛浮腫、散在する発赤とangioectasia(矢野・山本分類Type1a)を認め、EIS後の血行動態変化がPHE増悪に影響した可能性が考えられた。発表では当科で経験した肝硬変患者におけるEIS後のPHE変化に影響する因子について併せて報告する。

  • 杉野 敏志, 井上 健, 廣瀬 亮平, 土肥 統, 吉田 直久, 鎌田 和浩, 内山 和彦, 石川 剛, 高木 智久, 小西 英幸, 内藤 ...
    セッションID: O2-2
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【症例1】 87歳女性 【主訴】 貧血

    【内服】 ジゴキシン0.125mg、ビソプロロールフマル酸塩0.625mg、ラベプラゾール10mg、ロスバスタチン2.5mg、シロスタゾール50mg、フロセミド20mg

    【既往歴】 大動脈弁狭窄症(以下AS)、心不全、脳梗塞

    【現病歴】 201X年X月に貧血精査目的に前医入院となった。精査にて心不全、ASを認めた。また上部空腸からの消化管出血を認め、内視鏡的止血術を施行された。ASに対して経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)の施行目的に当院に転院となった。TAVI施行後34日目に黒色便を認め、小腸ADからの出血再発の疑いでバルーン内視鏡検査を施行した。空腸に多発するangiodysplasia(以下AD)からの出血を認め、APCによる凝固処置を施行し、以後黒色便なく退院となった。

    【症例2】 88歳女性 【主訴】 貧血

    【内服】 ボノプラザン10mg、ロスバスタチン2.5mg、バイアスピリン100mg、プラスグレル3.75mg、テルミサルタン40mg、ポラプレジンク75mg

    【既往歴】 AS、高脂血症、心筋梗塞

    【現病歴】 201X年X月に大ASおよび心筋梗塞後の経過観察で前医に通院中、貧血および黒色便を認め精査目的で入院となった。回腸に多発するADからの出血を認め、APCによる凝固処置が施行され、止血を得た。その後、空腸及び回腸に多発するADからの出血を認め、2回の内視鏡的止血術を施行された。ASに対してTAVIの施行目的に当院に転院となった。TAVI施行後は黒色便および貧血の進行なく退院となった。

    【考察】 ASに合併した消化管出血はHeyde症候群と定義され、消化管ADとVon Willebrand因子の質的異常を合併する疾患とされる。Heyde症候群を疑う2例を経験したので、文献的考察とともにここに報告する。

  • 福本 晃, 青山 大輝, 野村 理紗, 益田 啓志, 竹内 友香理, 竹元 裕紀, 鴫田 賢次郎, 朝山 直樹, 向井 伸一, 永田 信二
    セッションID: O2-3
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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    【症例】 80歳代、男性。 【主訴】なし。

    【既往歴】高血圧症、脂質異常症、耐糖能異常。

    【現病歴】 特に症状はなかったが3ヶ月前より、血液検査で貧血を指摘されるようになった。上下部消化管内視鏡検査を施行されたが出血源を認めず、当院紹介受診となった。便潜血反応は陰性であったが、血液検査にて鉄欠乏性貧血であったため、潜在性の原因不明消化管出血として小腸カプセル内視鏡検査(CE)を施行した。深部小腸に白苔の付着した発赤調の小さい亜有茎性の隆起性病変を認めpyogenic granulomaを疑った。同病変が出血源と考えられたため、まず経口的ダブルバルーン小腸内視鏡検査(DBE)を施行したところ空腸には病変を認めず、後日、経肛門的DBEを施行したところ、回腸にCEで指摘した病変を認めた。4mm大と小さく、局注による挙上も良好であったため内視鏡的粘膜切除術を施行した。病理組織では表面にびらんを認め、炎症細胞浸潤を伴う肉芽組織の増生を認めpyogenic granulomaと確定診断した。以後、貧血は改善し再燃も認めていない。

    【結語】 カプセル内視鏡・バルーン内視鏡の登場により小腸pyogenic granulomaの報告は散見されるようになったが、一般的には未だ稀な疾患である。小病変であれば内視鏡治療が可能なので、無症候性の比較的軽症の貧血であっても他に原因が無ければ、同病変の可能性も考慮して積極的に小腸検索を行うことが必要である。

  • 太田 和寛, 尾崎 晴彦, 西田 晋也, 原田 智, 小嶋 融一, 竹内 利寿, 樋口 和秀
    セッションID: O2-4
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
    会議録・要旨集 フリー

    【背景】 本邦において、維持透析患者数は年々増えており、透析患者の高齢化も進んでいる。透析において、鉄欠乏は貧血の重要な原因であるが、その原因はまだ明らかになっていない。我々は、維持透析患者に小腸カプセル内視鏡検査を行うことにより、患者背景と小腸粘膜病変との関係を検討した。

    【方法】 2014年4月から2015年12月に同意を得られた維持透析患者に対して小腸カプセル内視鏡検査を行い、患者背景と小腸カプセル内視鏡所見を横断的に解析し、小腸病的所見を有する群と有さない群で比較し、小腸病的所見のリスク因子を検討した。小腸病的所見の定義は、(1)活動性出血あり、(2)潰瘍あり、(3)3個以上のびらん、(4)5個以上の発赤病変、のいずれかを満たすものとした。

    【結果】 43名の維持透析患者の同意を得、全小腸を観察しえた39名で検討を行った。

    単変量解析では、血中ヘモグロビン濃度が、小腸病的所見を有する群(median, 7.7g/dL; range, 6.7-9.2g/dL)のほうが、有さない群(median, 10.65g/dL; range, 6.4-13.1g/dL)に比し、有意に低かった(p = 0.0006, Mann-Whitney U test)。多変量解析でも、ヘモグロビン値が独立したリスク因子であった(p = 0.0033)。ROC曲線では、9.2g/dLがカットオフ値であった。

    【結論】 透析患者において、貧血は小腸粘膜傷害のリスク因子であった。よって、小腸粘膜傷害の予防や治療により、透析患者の貧血を改善させる可能性があり、彼らの予後改善につながる可能性が期待できる。

  • 梅田 隆満, 藤森 俊二, 星本 相理, 橋野 史彦, 片岡 宏章, 髙木 信介, 西本 崇良, 大森 順, 佐藤 航, 秋元 直彦, 米澤 ...
    セッションID: O2-5
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】 小腸血管性病変は肝疾患や腎疾患などと関連が報告されているが、発生素因が不明な症例も認められる。小腸血管性病変の基礎疾患や発生部位などについて調査することが目的である。

    【方法】 2011年1月から2016年12月までに、カプセル内視鏡が施行され、小腸血管性病変を診断した76症例を検討対象とした。カプセル内視鏡の検査動機、消化管出血の有無等の患者背景、既往歴、病変部位、形態分類について分析、検討した。

    【結果】 性別は男:女 = 41:35、平均年齢は70 ± 13歳(24-95)、抗血栓薬またはNSAIDsの内服者が32例(42%)含まれていた。検査動機はOGIBが68例(89%)と大半であった。消化管出血は54例(69%)に認め、内訳は黒色便35例、血便19例で、潜在性出血と考えられる貧血例も16例(21%)認められた。既往歴は慢性心疾患31例(41%)、糖尿病19例(25%)、慢性肝疾患14例(18%)、慢性腎疾患9例(12%)等であった。病変部位は十二指腸3例(4%)、空腸41例(54%)、回腸24例(32%)、空回腸8例(10%)であった。病変形態はY-Y Type1aが27例(36%)、Type1bが50例(68%)、Type2aが2例(3%)、Type3が1例(1%)であった。

    【結論】 小腸血管性病変は基礎疾患としてさまざまな慢性疾患が認められ, 抗血栓薬もしくはNSAIDs内服者が多かった。これらの背景因子が小腸血管性病変の発症に対し、どのように関与しているかについては今後の検討課題と考えられた。

一般演題3
  • 平井 みなみ, 川崎 啓祐, 西谷 匡央, 上杉 憲幸, 菅原 教史, 菅井 有, 伊藤 薫樹, 松本 主之
    セッションID: O3-1
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
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     症例は59歳女性。主訴は上腹部痛。2019年2月初旬から上腹部痛を自覚したため前医を受診。腹部超音波検査で膵尾側に12cm大の腫瘤を認めたため、精査目的で当科に紹介入院となった. 腹部CT検査では腹腔内に15cm大の巨大な腫瘤を、上部消化管内視鏡検査では胃体上部後壁に、大腸内視鏡検査では横行結腸に壁外性圧排を認めた。カプセル小腸内視鏡検査、ダブルバルーン小腸内視鏡検査ではTreiz靭帯近傍に壁外性圧排を認め、その肛門側に発赤調の有茎から亜有茎、褪色調の平坦隆起と大小様々な隆起性病変を認めた。腹腔内腫瘍、小腸隆起性病変からの生検病理組織所見では中から小型核を有するN/C比の大きな類円形の異型細胞のびまん性増殖を認めた。免疫染色ではCD38陽性であり、形質細胞への分化が確認された。骨髄穿刺では異常はなかった。各種画像所見と病理組織所見より腹腔内の形質細胞腫とその小腸浸潤と診断した。以後血液内科に転科し化学療法を施行し、腫瘍は縮小傾向である。小腸に大小様々な隆起性病変を伴った腹腔内の巨大形質細胞腫は稀であり文献的考察を含め報告する。

  • 芦谷 啓吾, 都築 義和, 宮口 和也, 大庫 秀樹, 石澤 圭介, 茅野 秀一, 鈴木 将臣, 森岡 真吾, 浅野 博, 篠塚 望, 中元 ...
    セッションID: O3-2
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
    会議録・要旨集 フリー

     症例は、63歳女性。20XX年5月に、腹痛で前医を受診し、腸閉塞の診断で入院。絶食のみで症状が軽快するも、経口摂取を開始すると腹痛が再燃することを繰り返していた。造影CT検査では、小腸に壁肥厚を伴う狭窄と、狭窄部位の口側の拡張がみられ、精査加療目的で当科に紹介入院となった。

     大腸内視鏡検査では、回腸末端に多数のリンパ濾胞を認めるも、生検では悪性所見を認めなかった。経肛門的ダブルバルーン内視鏡では、回腸に多数のリンパ濾胞を認めるのみであった。パテンシーカプセルを施行し、カプセルの排出がみられなかったので、内服から30時間後にCT検査を施行し、S状結腸にあると判断した。小腸カプセル内視鏡を施行したが、排出がみられず、CTで確認したところ、パテンシーカプセルと小腸カプセル内視鏡ともに、骨盤内回腸に停滞していた。経口的ダブルバルーン内視鏡を施行したところ、回腸に潰瘍を伴う狭窄があり、そのすぐ口側に、コーディングのつぶれたパテンシーカプセルと小腸カプセルを認めた。パテンシーカプセルと小腸カプセルを回収ネットで回収した。狭窄部位の生検結果は、非特異的炎症であった。

     小腸狭窄の診断に難渋し、診断と治療目的で、消化器外科に転科し、今後、小腸部分切除術を施行する予定である。パテンシーカプセルと小腸カプセルを同時に回収した小腸狭窄症の1例を経験し、示唆に富む症例と考え、文献的考察も含めて報告する。

  • 深田 憲将, 若松 隆宏, 島谷 昌明, 中川 達也, 田中 敏宏, 鈴木 亮, 富山 尚, 福井 寿朗, 岡崎 和一
    セッションID: O3-3
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
    会議録・要旨集 フリー

    【症例】 60歳代女性 【主訴】 CEA高値

    【現病歴】 以前より時折腹痛を自覚し、他院に通院中であった。以前よりCEA高値を指摘されていたが、CEA漸増を指摘され、精査目的で紹介受診となる。

    【既往歴】 20歳代虫垂炎手術、50歳代子宮体癌、子宮全摘後、放射線療法後

    【来院時現症】 腹部:平坦、軟、下腹部に軽度圧痛を認める。 【血液検査所見】 CEA12.5ng/ml

    【経過】 腹部造影CTで骨盤内腸管に屈曲像と腸管壁肥厚を認めた。FDG-PETでは異常集積を認めなかった。上部消化管造影を行い、大腸到達まで観察を行ったが、バリウムの通過は良好で明らかな狭窄や粗大病変を指摘されなかった。パテンシーカプセル(PPC)を服用し、33時間後にPPCの排出を認めなかったが、腹部レントゲン検査で直腸にあると判断しカプセル内視鏡(CE)検査を開始した。カプセル内視鏡は8時間経過するも大腸へ到達せず、再度腹部レントゲンを撮影するとPPCは9時間前に撮影した際の位置と変化を認めなかった。2週間後に腹部レントゲンを撮影するとPPCは確認できなかったが、CE骨盤腔内に確認し、CE滞留と判断した。さらに2週後に経口ダブルバルーン内視鏡検査を施行し除去を試みたが、CEまで到達できず、回収できなかったが、翌日自然排出した。

    【結語】 放射線性腸炎に対するCEの有用性が報告されているが、放射線性腸炎は強い癒着を起こすことがあり、屈曲も強くなり消化管通過性が悪くなることをしばしば経験する。放射線治療歴を有するカプセル内視鏡検査は適応を慎重に検討する必要がある。

  • 邉見 雄二郎, 能田 貞治, 平田 有基, 柿本 一城, 田中 泰吉, 峠 英樹, 西田 晋也, 辻本 裕之, 太田 和寛, 原田 智, 小 ...
    セッションID: O3-4
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
    会議録・要旨集 フリー

    小腸脂肪腫は、小腸疾患の診療において時々遭遇する。大きな病変では、特に腸重積のリスクが高くなるため、治療が必要である。今回、小腸脂肪腫に対して内視鏡的に阻血治療が有効であった2症例を経験したので報告する。

    【症例1】 60歳代、男性。腸重積にて入院となり、注腸造影にて重積の整復を行った。CTで回腸に長径21mmの脂肪濃度の腫瘤を認めた。経肛門アプローチのダブルバルーン内視鏡(DBE)を行い、粘膜下腫瘤に対してUnroofing techniqueによる切除を行った。病理学的に脂肪腫の診断が得られた。2ヵ月後のCTで長径15mmと病変の残存を認めるため、再度DBEを施行し、留置スネアにて病変の基部付近で絞扼した。2ヵ月後のCTでは、病変は残存しているものの長径8mmと明らかな縮小を認めた。

    【症例2】 40歳代、女性。腸重積を契機に脂肪腫症の診断で、回腸の区域性に増生した脂肪腫に対して小腸部分切除を行い、経過観察を行っていた。術後4年が経過した頃より下腹部不快を感じるようになった。CTでは回腸に径20mm大の脂肪腫を認め、術後経時的に行っていたCTから同病変は増大傾向であった。同病変の治療を目的にDBEを施行した。回腸に2病変の脂肪腫を認め、1病変にはクリップで、1病変には留置スネアで、それぞれ病変の基部で阻血を行った。2カ月後のCTで同病変は認めず、脱落に至ったと考えられた。今回、小腸脂肪腫に対して阻血治療を経験した。留置スネアやクリップによる治療は、合併症も認めず、容易であった。文献的考察を含め、報告する。

  • 田中 啓仁, 上村 修司, 湯通堂 和樹, 小牧 祐雅, 井戸 章雄
    セッションID: O3-5
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/01/18
    会議録・要旨集 フリー

    【背景】 Cronkhite-Canada症候群(Cronkhite-Canada syndrome; CCS)は、消化管ポリポーシスに脱毛・爪甲萎縮・皮膚色素沈着などの特徴的な皮膚症状を伴う非遺伝性疾患である。症例の約半数が小腸病変を有していると言われているが、小腸病変の画像報告例は少ない。

    【目的】 当院で経験したCCS 3例の小腸カプセル内視鏡(CE)所見について検討した。

    【結果】 症例1.60代男性。主訴は下痢、味覚異常、体重減少。2ヶ月前から下痢などの症状を認め、同時期から手指の色素沈着、爪の萎縮を自覚していた。上・下部消化管内視鏡(EGD、CS)で胃・十二指腸に腺管の拡張した発赤調ポリープの集簇、大腸に光沢のある発赤調小隆起をカーペット状に認め、CEでは全小腸にびまん性に発赤調粘膜、粘膜浮腫と絨毛の腫大をが観察された。これらの特徴的な内視鏡と皮膚所見よりCCSと診断し、PSL治療開始した。治療反応は良好で再燃なく経過している。

    症例2.50代女性。主訴は皮膚色素沈着。6年前より両手背、手掌と上腕の色素沈着および手足爪の脱落を自覚しはじめたが、自然消退と増悪を繰り返していた。また4年前よりびらん性胃炎と胃過形成ポリープを指摘されていたが、経過観察されていた。徐々に嘔気と軟便を認めるようになり当科を受診した。EGD、CSにて胃前庭部を優位とする多発性発赤調ポリープ、回腸末端の絨毛萎縮と発赤調のポリープ、大腸にも発赤調ポリープが散在していた。粘膜生検にて腺の囊状拡張、粘膜の浮腫と炎症細胞浸潤を認めた。CEでは、全小腸に散在性の暗赤紫調小隆起と絨毛の萎縮を認めた。本症例も特徴的な臨床と内視鏡所見よりCCSと診断し、ステロイド治療を開始され経過は良好である。

    症例3.70代男性。主訴は下痢、脱毛。EGD+CSにて胃にイクラ状の無茎性ポリープや有茎性ポリープ、大腸全体に発赤調ポリープが密集していた。粘膜生検で腺の囊状拡張、粘膜の浮腫、炎症細胞浸潤を認めた。CEで空腸主体だが全小腸に発赤調浮腫状粘膜、萎縮と腫大が混在した絨毛を認めた。これらの所見からCCSと診断しPSL治療が開始したが、PSL依存性のため免疫調節薬併用を要した。免疫調節薬併用後は、臨床的寛解となり4年後の内視鏡検査では特徴的な粘膜所見は消失していた。

    【結語】 経験したCCS3例ともに全小腸に病変を認めたが、臨床所見やステロイド治療反応性との関連はなかった。発症から診断までの期間が長いほど、小腸の粘膜には多彩な所見を有する可能性があるが、さらなる症例の蓄積が必要であると考えられた。

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