日本小腸学会学術集会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2434-7019
Print ISSN : 2434-2912
第57回日本小腸学会学術集会
セッションID: S4-4
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主題セッション4 薬剤起因性小腸傷害の現況と対策
大腸カプセル内視鏡による全腸観察を利用したNSAIDs起因性腸病変評価の有用性
*平賀 寛人櫻庭 裕丈有明 千鶴前田 高人村井 康久渡邊 里奈立田 哲也蓮井 桂介菊池 英純澤谷 学平賀 典子珍田 大輔三上 達也海老名 麻美福田 眞作
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抄録

【背景・目的】 2014年に保険収載された大腸カプセル内視鏡(以下CCE)は患者受容性の向上、生理的状態での観察等の点で期待が大きい。AFR機能を活用した全腸観察による付加価値を検討するため、「Total Observation from intestine To Anal Lesion:TOTAL study(UMIN ID:000027621)」を立案した。今回我々は、TOTAL study症例で非ステロイド系消炎鎮痛薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)起因性腸病変を後方視的に評価することで、CCEによる全腸観察の有用性を示すことを目的とした。

【方法】 対象は大腸疾患が確定または疑われ、本研究に同意が得られた被験者(16歳以上80歳未満)とし、前処置はモビプレップ・ひまし油レジメンを採用した。

【結果】 2019年1月現在、登録症例数109例、対象は潰瘍性大腸炎40例、ベーチェット病30例、スクリーニング23例、その他16例で全大腸観察率:104/109例(95.4%)、平均全腸通過時間:204分であった。NSAIDs内服症例は12/109例(11.0%)でいずれも無症状、うち4/12例(33.3%)にNSAIDs起因性小腸病変(全例下部回腸の発赤・アフタ性病変)を認めたが、大腸病変の併存は認めなかった。

【結語】 CEによる全腸観察を利用したNSAIDs起因性腸病変の評価は、安全性・忍容性・精度に加えて小腸・大腸病変の一括観察という付加価値もあり、非常に有用と考えられた。高齢化社会が進む我が国におけるNSAIDsの需要は増加の一途をたどっており、大腸がん検診等でCCEによる全腸観察を採用することで、無症状のNSAIDs起因性腸病変に対する早期治療介入が可能と考えられ、今後の更なる発展が期待される。

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© 2019 本論文著者
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