【背景】クローン病の病態には腸内細菌が関連すると考えられているが、小腸細菌叢を解析したものは少ない。我々はダブルバルーン内視鏡(DBE)を用いて小腸細菌叢解析を行うことによりクローン病の病態に関わる細菌の同定を試みた。
【方法】クローン病症例および対照群からDBEを用いて深部小腸よりサンプルを採取した。Illumina MiSeqを用いて菌叢解析を行い、統計学的解析を行った。さらにクローン病の小腸粘膜サンプルから網羅的に単離した細菌のうち、クローン病関連菌を無菌マウスに投与し、腸管免疫細胞および腸炎誘導能の解析を行った。
【結果】クローン病の小腸粘膜ではE. coliやR. gnavusを含む18菌種が多かった。網羅的単離で得られたクローン病由来細菌ライブラリーのうち、上記解析に合致するクローン病関連9菌株を無菌マウスに投与したところIFNg産生性CD4陽性T細胞(TH1細胞)が強く誘導され、その中でもクローン病由来E. coli 35A1株がTH1細胞誘導の中心的な役割を果たしていた。E. coli 35A1のTH1細胞誘導ならびに腸炎誘導能は他の大腸菌株(LF82、MG1655)より有意に強くみられた。
【結語】クローン病由来E. coliは菌株依存的にTH1細胞誘導能や腸炎誘導能を示したことから、菌株特異的なメカニズムを有することでクローン病の病態に関与していることが示唆された。