【目的】再発性C.difficile感染症に対する糞便微生物叢移植(FMT)の有効性は確立されているが、クローン病については議論の余地がある。潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)に対するFMTの有効性と糞便微生物叢、短鎖脂肪酸(SCFA)、胆汁酸(BA)の変化を解析した。
【方法】対象は2016年1月~2017年12月にFMTを施行した潰瘍性大腸炎20例およびクローン病患者4例。FMTの有効性は、UCに対してMayoスコア、クローン病に対してクローン病活動指数(CDAI)スコアで評価した。便中腸内細菌叢の解析は16SリボソームRNA遺伝子の配列を決定し、代謝産物は便中のSCFA、BA濃度を測定した。
【結果】Clinical responseは、UC、CDでそれぞれ5/20(25%)、3/4(75%)、で、Clinical remissionは、UCが4/20(20%)、CDが1/4(25%)であった。LEfSeによる腸内細菌叢の解析では、UCの有効例でClostridium cluster XIVaがFMT前にはドナーと比較して少ないが、FMTによって増加することが示された。ドナーにおけるFusicatenibacter saccharivoransの豊富さは、FMT後8週目におけるClinical remissionと有意に相関していた(P = 0.0064)。CDではFMT前にBlautia、Dorea、Eubacteriumが少なかったが、FMT後にCollinsella、Dorea、Eubacteriumが増加し、SCFA代謝のfunctional profilingと便中酪酸濃度の上昇を認めた。胆汁酸濃度に関してはFMT前後、ドナーとの間に有意差は認めなかった。
【結論】FMTは炎症性腸疾患に対して有効性を示した。FMTは腸内細菌叢の構成とSCFA産生を改善することによって有効性を示すことが示唆される。