日本小腸学会学術集会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2434-7019
Print ISSN : 2434-2912
第58回日本小腸学会学術集会
セッションID: S1-4
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シンポジウム1 基礎から臨床へ:栄養、腸内細菌
化学療法に伴う下痢症と腸内細菌叢との関連
*川崎 裕香柿本 一城木下 直彦田中 泰吉峠 英樹小柴 良司中 悠平田 有基太田 和寛寺澤 哲志宮嵜 孝子後藤 昌弘田中 良紀大野 裕史中島 淳二中村 志郎樋口 和秀
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抄録

【背景と目的】化学療法は癌治療において必要不可欠な治療法であるが、しばしば下痢症などの有害事象が問題となる。近年、マウス実験モデルにおいて化学療法に伴う消化管障害とdysbiosisが関連していることが報告されたが、ヒトでの報告はない。そこで今回、化学療法に伴う消化管の有害事象と腸内細菌叢の関連を検討した。

【方法】2018年12月~2020年3月までに当院で大腸癌に対する1st lineの化学療法としてfluoropyrimidinesを投与した症例を対象とした。治療開始前と1サイクル終了後に採便し、糞便中の菌叢を次世代シークエンサーを用いて解析した。化学療法に伴う消化管の有害事象と、腸内細菌叢の関連について検討した。

【結果】症例は23例であり、fluoropyrimidines経口投与群が19例、経静脈投与群が4例であった。消化管の有害事象が発生したのは下痢4例、他の消化管症状3例(悪心、食欲不振など)であった。(治療前後の菌叢変化)経口投与群において、下痢群では治療後にα多様性(observed OTUs, chao1, ACE)が減少したが、非下痢群では変化を認めなかった。また下痢群では有意にBifidobacterium属が減少したが、非下痢群ではBifidobacterium属、Fusicatenibacter属、Dorea属が増加した。(治療前の下痢群/非下痢群の菌叢比較)下痢群では有意にRuminococcus属が少なく、Phascolarctobacterium属が多かった。

【結語】マウス実験モデルにおいてBifidobacterium属がfluoropyrimidinesの消化管傷害を改善することが報告されているが、今回の結果も化学療法に伴う下痢症におけるBifidobacterium属の重要性が示唆された。

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© 2020 本論文著者
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