食品衛生学雑誌
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調査・資料
拭き取り検体からのノロウイルス遺伝子検出状況
宗村 佳子 木本 佳那小田 真悠子永野 美由紀奥津 雄太森 功次秋場 哲哉貞升 健志
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2017 年 58 巻 4 号 p. 201-204

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抄録

2015~16年に都内で発生した食中毒疑い259事例の拭き取り1,726検体についてノロウイルス(NoV)の検出状況を調査した.41事例から得られた65検体(3.8%)が陽性となったが,陽性検体はすべてNoV検出事例由来であった.拭き取り由来32検体の塩基配列は同一事例内の患者検体などから得られた塩基配列とすべての検体で100%一致した.拭き取り検査が,病因物質や感染ルートの特定に有用な事例もあったが,単独で食中毒の原因究明につながった例はなく,拭き取り検査の結果は疫学調査や臨床検体などの検査結果と併せて解釈する必要があると考える.さらに,拭き取りが行われるのは事例発生後数日を経ていることから,消毒の影響などを考慮すべきである.NoV検出事例における場所別陽性率は,トイレが8.6%(55/640)で最も高く,調理室では1.0%(6/618)であった.トイレで最も陽性率が高かった部位は便器(43.6%)であり,便座(14.5%)が次いだ.さらに,ドアノブや床などトイレ内の広範囲からNoVが検出された.拭き取り検査陽性は,衛生管理が適切でないことを示唆しており,その結果は衛生指導に活用できると考える.

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© 2017 公益社団法人 日本食品衛生学会
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