抄録
1. 宮城県地方における食品害虫, ことに菓子類に加害する害虫について, 1968年から1969年にかけて研究した. 消費者から届出のあった虫害品および著者らの調査から, ノシメマダラメイガ, ノコギリヒラタムシ, ナガヒョウホンムシ, ヒメマルカツオブシムシ, カツオブシムシの1種が発見された. ほかに, コクガ, カシノシマメイガ, ツヅリガ, コクゾウムシ, アズキゾウムシ, エンドウゾウムシの分布が認められた.
2. 菓子虫害品のほとんどはノシメマダラメイガ幼虫の加害によるものであった. 1968年には本種幼虫の加害のうちチョコレート類は19件で, ナッツ入りがもっとも多く, ついでミルクチョコレートの順であった. 他の菓子類は10件で, ナッツ・ビーンズ入りのものに著しかった. トラップ法においては, ビスケットにもっとも多く出現した.
3. ノシメマダラメイガによる被害品は県下に広く発生した. 県内2市・1町に設置したトラップ法からも, 本種は県内に広く分布することが認められた.
4. 虫害品は7~10月に発見され, ことに8~10月に多く発見された. トラップ法におけるノシメマダラメイガの産卵活動は7~11月に連続して認められ, 7月, 8月下旬~9月当初にピークとなる傾向があった.
5. 本種は, 流通機構の各段階で発見された. トラップ法では各種小売店のすべてで発見され, 地方問屋倉庫, 大卸倉庫でも認められた. ことに返品置場に顕著であった. また, 消費者家庭でも生息が認められたから, 本種による虫害は, 各所で起こりうると考えられた.
6. ノシメマダラメイガは狭い空間でも正常に羽化し, 摂食しないまま交尾・産卵した. これは狭い生息環境によく適合する習性と考えられた. メスは羽化後間もなく交尾し, 1969年の実験例では7~9日間生存して210~254卵程度産卵した. オスは羽化後2日以降に交尾した. 交尾回数はメスは普通1回, オスは2~3回おこなう例があった.
7. 本種の卵期間は6~8月の室温で4~8日, 25°および30°の定温で5日, 卵から羽化開始までの期間は同じ室温で73~83日, 25°定温で48~66日, 30°で49~73日という結果を得た.
8. 成虫および幼虫の温度反応実験により, 本種は低温条件に対し, 比較的広い適応性を有することが示唆された.