1982年12月, 和歌山県下で巻貝ボウシュウボラ Charonia sauliae の内臓の喫食による麻ひ性の食中毒が発生した. その採取地点などでこの巻貝をあつめ, 毒性を調べたところ, 過半の個体の中腸腺が有毒で, 中にはテトロドトキシン (TTXと略記) として480MU/gの毒性を示すものもみられ, この個体の総毒量は37,000MUにも達した. これらの中腸腺から, 既報のTTX精製法に準じて, 有毒成分を単離精製した. TLC及び電気泳動挙動, また1H-NMRスペクトルを調べたところ, すべての点においてこの有毒成分はTTX標品とよく一致し, この毒はTTXと同定された. 従って, 上記中毒の原因物質はTTXと結論された.