2009 年 30 巻 3 号 p. 286-292
反復する中耳炎の要因としてI.乳児の免疫学的未熟性,II.多剤耐性菌の増加,III.社会環境,家庭環境の変化が挙げられているが,極めて難治な反復性中耳炎ではさらに胃食道逆流症が関与している可能性を考える必要がある。
今回,胃食道逆流症が背景にある小児反復性中耳炎の 4 症例を経験した。これらの症例は中耳炎の制御が極めて難しく,鼓膜切開,鼓膜チューブ留置など外科治療も含め,長期に抗菌薬を服用していた。さらに 3 症例は制御の難しい呼吸器症状を伴っていた。24時間食道 pH モニタリング,上部食道造影検査,食道シンチクラフィーなどの検査方法を組み合わせることで胃食道逆流症の診断が可能であった。
治療の中心は保護者に対する胃食道逆流症の啓蒙と食事に関する生活指導である。薬物療法については H2 受容体拮抗剤,クエン酸モサプリドを処方している。しかしながら当院では現在のところ十分な効果が得られているとはいえない。