抄録
口蓋扁桃摘出術は耳鼻咽喉科において小児に対して最も多く行われる手術の一つであるが,周術期における抗菌薬投与の要否については未だ一定の結論を得ていない。今回我々は小児口蓋扁桃摘出術時の抗菌薬を,術後 7 日間の経口投与から,執刀30分前にセファゾリンを一度投与するのみで以後は投与しない方法へと変更し,それによる術後合併症への影響を検討した。
2004年12月から2009年 1 月の間に甲南病院あるいは六甲アイランド病院で口蓋扁桃摘出術を行った 2 才~13才の小児140名を対象とした。入院期間中に観察された(1)術後の発熱,(2)術後の疼痛,(3)摂食状況,(4)二次出血,(5)その他の有害事象の各項目について比較検討を行った。
いずれの項目の検討においても,術後投与群と術前単回投与群で統計学的に有意な差は見られなかった。小児口蓋扁桃摘出術時における執刀30分前のセファゾリン単回点滴投与は,術後 7 日間の抗菌薬内服投与と比較して術後合併症の増加は見られず,下痢などの副作用はむしろ減少する傾向にあった。