2010 年 31 巻 3 号 p. 228-232
重複障害児は周産期医療の発達とともに増加傾向にあるが,正確な聴力評価が困難である。また難聴の診断のみが早期に行われ,当初は難聴単独の障害として療育が開始されるが,後に広汎性発達障害(PDD)などの他の合併症が顕著になることがある。重複障害児の聴力評価は定型発達の難聴児と同様に行われるが,脳性麻痺(CP)など脳の器質的障害を伴う児では,条件詮索反応聴力検査(COR)などの行動反応聴力検査と,聴性脳幹反応(ABR)・聴性定常反応(ASSR)の結果が一致せず,聴力確定が困難な場合がある。また,合併症の医療ケアが優先されるため,補聴器(HA)装用のタイミングは個人差が大きい。PDD を伴う児では過敏性のために HA 装用や音の刺激を嫌がることがあるため,疾患の特性を理解した上で慎重に行う必要がある。重複障害児であっても補聴効果が見られない場合は重複障害の程度を総合的に判断して人工内耳を考慮するが,療育に関わる人達の理解と見解の共通性が求められる。