抄録
乳児喉頭血管腫は急速に気道閉塞など重篤な障害をきたしうる疾患であり,これまではステロイド,ビンクリスチン,インターフェロン α,レーザー焼灼術,気管切開術,外切開手術などの治療が試みられてきた。今回我々は,喉頭血管腫に対し,β 遮断薬投与が著効した症例を 2 例経験した。症例 1 では呼吸苦を繰り返していた声門下血管腫に対して投与し,急速な呼吸苦の改善を認めた。症例 2 では比較的広範に及んだ声門上血管腫に対して投与し,腫瘍の良好なコントロールを得ている。乳児血管腫に対する β 遮断薬による治療は2008年に Léauté-Labrèze らが発表して以来,海外では報告があるが本邦での喉頭血管腫に対する報告はない。β 遮断薬は即効性があること,経口投与可能で低侵襲であること,副作用が少ないことなどから今後,本邦でも新しい乳児血管腫の治療法の選択肢となりうると考えられる。