小児耳鼻咽喉科
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原著
小児のムンプス難聴の臨床的検討
水川 知子水川 敦裕松岡 るみ子佐藤 宏昭小林 有美子村井 盛子宍戸 潔草野 英昭
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2011 年 32 巻 3 号 p. 364-371

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抄録

  過去29年間に当科を受診した小児のムンプス難聴49例中,厚生省特定疾患高度難聴調査研究班の作成した診断基準(1987)に基づいて診断した確実例37例を対象として,性差,両耳性,発症年齢,耳下腺腫脹から難聴発現までの日数,前庭症状,初診時聴力検査,治療,治療後聴力検査成績につき検討した。性差は男性20例,女性17例であり,一側性35例(95%),両側性 2 例(5%)であった。耳下腺腫脹から難聴発現までの日数は,耳下腺腫脹の 1 日前~16日後までで,平均6.6日であった。初診時聴力検査では,37例中32例が重度難聴あるいは聾であり,治療にもかかわらず 1 例を除く36例では聴力の改善がみられなかった。当科を受診したムンプス難聴患者数の経時的な増減は,全国のムンプスの流行の時機とよく一致していた。従来の報告と同様,今回の検討でもムンプス難聴の予後は不良であり,対策としては早期の予防接種の定期化が重要である。同時にムンプス難聴の啓蒙活動,小児科医との連携,ムンプスワクチンの質の向上が必要と考えられた。

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© 2011 日本小児耳鼻咽喉科学会
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